もえぎ野Web文庫 | 催しもの情報
リンクタグ


とらとほしがき
『ふるやのもり』の韓国版です。
おじいさんとおばあさんが母と赤ちゃん、オオカミがトラで、雨漏りが干し柿、設定がだいぶ違いますが、うっかり勘違いから恐怖におののき、猛スピードで盗人を背に走り出すストーリー展開はまったく同じ。 さかのぼれば、インドの説教説話集『パンチャントラ』がもとになっているようです。

現代っ子は、雨漏りより干し柿のほうが、共感できそうでしょうか。トラは韓国の昔話で一番よく登場する動物なのだそうです。 ユーモラスなトラの表情がなんとも愛らしく、どのページも力強く美しいタッチで描かれた画が素晴らしいです。

アイゴー! アイゴー!
読み比べて絵本から、異国を味わうのもいいものです。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


ちいさくなったおにいちゃん
お父さんの職業が錬金術師だったり、古めかしい服装から昔話の風情も感じられる4人家族のお話。

ある日両親の留守中に、お父さんの言いつけを守らずに、勝手に実験室に入り新しい薬を作って飲んでしまったお兄ちゃん。あろうことか体が虫のように小さくなってしまったのです・・

突然のことにとまどいながらも、弟のチャールズはせっせと小さくなったお兄ちゃんの世話をするのですが、世話をするうちにお兄ちゃんが小さいままでもいいかなあなんて思ったり、お母さんは赤ちゃんの再来と、小さな洋服をせっせと嬉しそうに作ったり・・・お父さんだけは、大いに落胆し、必死でもとにもどる方法はないかと考えます。

小さくなっても、いばりんぼうの性格がいっこう変わらないおにいちゃんでしたが、いよいよ不安になり、「もとに戻れなくなったらどうしよう」と弱音を吐きます。すると、ぼくが一生面倒みてあげるよと弟。
周囲の人間の気持ちや性格を、これほど生き生き描いた本はないのではないでしょうか。どんな姿になっても、家族というゆるぎなさがあり、読者を幸せにしてくれるハッピーエンドのお話になっています。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


からすのカーさんへびたいじ・セミたちの夏
『からすのカーさんへびたいじ』
   はこやなぎの木の上に、からすのカーさんとカーおくさんが巣をかけていました。木の根元の穴にはがらがらへびが住んでいます。名前はガラガラどん(どこかで聞いたことのある名前ですね。。。!)

カーおくさんは毎日1つずつ卵を産んでいるのに、買い物から帰ると卵が見当たりません。留守の間に穴から這い出してきたガラガラどんが、食べてしまっていたのでした。なんとその数297個!産んでも産んでも卵が1つもかえらないなんて!
犯人がわかったカーおくさんは、だんなさんに涙ながらに、へびを退治してくれるように頼みます。

カーさんは知恵のあるふくろうのホーおじさんに相談することにしました。自ら退治に行かぬだんなさんに、あなた、こわいのね!と弱虫よわばりされてしまうのですが、このあたりの夫婦のやりとりも楽しいところです。

からすのカーさんは、ふくろうのホーおじさんの指示に従って、一緒に偽たまごを作ることになりました。たまごを作る過程も丁寧に描かれます。

そしてついに完成した偽たまごを、いつもの巣に置いておくと・・・
ガラガラどんは 当然のようにのみこんで
はじめは 歌なんか歌ってのんきだったのですが、
苦しんで よじれているうちに なんとからまりほどけなくなって。。。

最後のページには、子だくさんとなったカーおくさんが、しなびたへびをロープがわりにして、子ガラスの洗濯ものを干すというなかなかシュールな絵柄で終わります。

オールダスは5歳の姪のためにこのお話を書きましたが、挿絵が書けぬまま原稿を焼失してしまい、長い間忘れられていたということです。作者の死後、隣人のヨスト夫妻が原稿のコピーを持っていたことがわかり、バーバラ・クーニーが絵を描き絵本になったそうです。 バーバラ・クーニーの味のある表情豊かな画が、このお話の面白さをいっそう引き立てていることを考えると、作者亡き後に復活した強運とクーニーとの好運な出逢いに感謝したくなります。


『セミたちの夏』
   都会のかぎられた自然の中でもたくましく生きるセミたち。
幼虫が長年地中で生きるということは知っていても、卵が地上の木の枝に産みつけられて、生まれると土にもぐるということを知っている人は少ないのではないでしょうか。

知っているようで知らないアブラゼミの一生を美しい写真で見せてくれる写真絵本。
一瞬一瞬をとらえた命のひとコマはドラマチックで、 暑いなか盛大に鳴いているセミたちの声がなんだか愛おしく感じられます。
是非夏休みに手に取ってみてください。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


歯いしゃのチュー先生
ネズミのチュー先生は、腕利きの歯医者です。
奥さんと2人でやっています。
小さい動物から大きい動物まで・・・大きな動物の時には、はしごやクレーンを使ったりロープを腰に巻いて宙吊りになったりして、患者さんの口の中に入って治療をします。(その画がとてもユーモラスで、読者を惹きつけずにはいられません)
ただし、猫など危険な動物はお断り!(食べられちゃいますからネ、笑)

ある日1ぴきのキツネが歯が痛いとやってきます。
あんまり痛がるので身の危険を感じながらも、キツネの為に治療をしてあげることにしました。

キツネは歯を治してほしくてたまらないけれど、治ったら食べちゃってもいいかなと悪巧み。 チュー先生も奥さんも用心しながら治療にあたるのですが・・

命がけのチュー先生と、狡猾なキツネとの駆け引き、さてどうなるでしょうか。くるくるかわるキツネの表情にハラハラドキドキ、そしてチュー先生のプロ意識に脱帽です。

低学年向きかなと思いますが、大人が読んでもユーモアがあって面白いお話だと思います。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


ひゃくまんびきのねこ
年をとったおじいさんとおばあさんは、寂しいのでねこを飼うことに決めました。ねこを探しに出かけたおじいさんは、たくさんのねこであふれた丘にたどりつきます。

そこにもねこ あそこにもねこ 
どこにもかしこにも ねことこねこ
ひゃっぴきのねこ せんびきのねこひゃくまんびき、
一おく、一ちょうひきのねこ

どのねこもかわいく見え、おじいさんはみんなを連れてうちに帰ってきます。でも、そんなにたくさんのねこは飼えません。そこで、おじいさんとおばあさんは、どのねこを家に置くかを ねこたちに決めさせようとしますが、けんかをはじめ おおさわぎになりました。

残ったのは、やせこけた小さなねこ。おじいさんとおばあさんに愛され、ミルクを飲むねこのページに、だんだんふとっていくね と子どもたち。

「このねこは、やっぱりとてもきれいですよ」とおばあさんが言うと、おじいさんも、
「このねこは、世界中でいちばんきれいなねこだよ。・・・・・・・だってわたしは、ひゃっぴきのねこ せんびきのねこ ひゃくまんびきのねこ・・・を見てきたんだからねえ」

細長い絵本の2ぺーじをめいっぱい使って、流れるようなリズムのレイアウトで描いたのは、ワンダ・ガアグが最初だったそうです。ダイナミックで力強いのに愛嬌があり
お話のスケールも大きく、モノクロなのに魅せられます。
小学2年生のクラスで読んだときに、一番前で食い入るように聴いていた子が、あーおもしろかったぁ~!と満足げに言った顔が今も忘れられません。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


もりのこびとたち
深い森の奥の木の根もとに、こびとのおうちがあります。
そこにはこびとの家族がすんでいて、こびとの子どもたちは、りすとかくれんぼしたり、かえると飛びくらべをしたりして遊びます。
少し大きくなると、物知りのふくろうおばさんの学校で、森のことを学び、トロルに脅されたりもします。登場する動物たちのリアルな絵から、テキストにはない愉快さも伝わります。

森の自然の季節の移り変りが美しく描かれ、自分たちのまわりの森や林にも、こびとの家族が本当にいるかもしれないと思わせてくれるワクワク感。 こうもりの背中に乗せてもらったり、まつかさの鎧に身を包み蛇と格闘したり‥いつのまにかこびとサイズになってつい夢中に、笑。

6人の子どもを育てたベスコフ。子どものちょっとした仕草や可愛い動作がよく描かれており、愛らしい姿に幼い我が子を思い出し懐かしい気持ちになる読者も多いのではないでしょうか。

春の訪れの喜びとともに、こびとのおかあさんにもあかちゃんが生まれ、 この楽しい暮らしがずっと続いていく喜びを予感させてお話が終わります。
大人になって知った絵本ですが、小さい頃に出逢って、この世界で夢中になれた子は幸せだろうなと羨ましくなります。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


ものいうほね
うららかな日に、豚のお嬢さんパールは学校からまっすぐ家に帰らないでぶらぶら寄り道。町で働く大人たちの仕事を観察するところからお話ははじまります。

豚だけど、お嬢様・・品の良さと愛らしさがとてもよく描かれていて何ともカワイイ。そしてパールは、まちから森へはいり、春めく森の地面に「なにもかもがすてき」とうっとり座ったところで、ふしぎな骨と出会うのです。

それは何と魔女が落とした、しゃべることができる不思議なほねでした!
のどかな物語は一気に急展開。追い剥ぎに脅されたり、豚攫いが現れ拉致監禁されたり、いよいよ調理されそうな事態となり大ピンチ。のどかな春の様相から一転刑事ドラマのような展開になりますが、呪文が骨の口?から飛び出し事なきを得て、その後も骨と幸せに暮らしましたという…ハッピーエンド。

スタイグの魔法話はいくつかありますが、どのお話も最後には幸せに終わるというゆるぎない安心感があり、登場人物(動物)の豊かな表情に魅せられながら、先へ先へと進める楽しさがあります。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


みつけたものとさわったもの
犬のナップとウィンクルは、2ひきで骨を掘りだします。  
骨を先に見つけたのがナップ、骨に先にさわったのがウィンクル。 
このほねはぼくのだ。ぼくがさいしょにみつけたんだから。
このほねはぼくのだ。ぼくがさいしょにさわったんだから。
骨はどちらのものか、2匹は道行く人にたずねます。

荷車がぬかるみに車輪をとられてぬけなくなってしまっていた農夫は、引き出すのを手伝ってくれたらかんがえてあげるといいますが、やっとこ車輪がぬけると、ほねのことなど知ったことかと、行ってしまいます。

つぎに聞いたのが立派なやぎですが、干し草だけむしゃむしゃ食べられて、脅されるのみでした。懲りずに次に出会った床屋の見習いにも尋ねるのですが、ヘアカットだけされて無視されてしまいました。(2匹はまんざらでもなさそうですが、かなりへんてこりんなカットです;)

そして最後に大きな犬が、はじめて興味をもって話を聞いてくれるのでした。
そう、大きな犬は骨をいただくのが目的でした。骨を持って行かれてしまったナップとウィンクルは、はっとしてお互い目を合わせその大きな犬にとびかかります。そして全力で闘い、やっとのことで骨を取り返すことができました。
取り戻した骨をいっしょにかじりながら、二匹はもうなにもいいません。

赤と黄土色のページが交互になっていて、画面いっぱいに描かれる登場人物はダイナミックで表情がとてもユーモラス。好奇心いっぱいで、くったくないナップとウィンクルの表情は幼い子どもそのものです。子どもが一生懸命聞いているのに軽くあしらって、手伝いだけさせる大人たち。お菓子で誤魔化すなんていうのもこれと同じなのかもしれないなと・・・ずるい大人の場面場面にドキッとしながらも、2匹のたくましい成長ぶりにホッとするのでした。

1952年、コールデコット賞受賞作品。原題は「Finders Keepers」これは、<落し物は拾い得>:拾ったものは自分のものにすることができるが、なくしたら泣きをみるーという意で、映画や小説のタイトルにも使われていることわざだそうです。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


まいごになったおにんぎょう
スーパーの冷凍庫に落ちた、ちいさなお人形。
持ち主の女の子はお人形を気に入っていなかったので、なくなったことにも気づきません。 お人形は誰にも知られず、冷凍庫のなかでひとりぼっちになってしまいました。

ある日、小さな女の子が冷凍庫のお人形を発見します。
そして次のお買い物の時に、寒そうに見えたお人形のために、ちっちゃなぼうしとオーバーを作って届けました。また次もそのまた次にも‥‥ お人形は女の子からの贈り物を喜び、冷凍庫で楽しく過ごします。マッチ箱をベッドにしたり、冷凍グリンピースをボールにして遊んだり。。。

女の子はお人形を思い、お人形も女の子を思う。
おたがいじっくりと知り合えたころにようやく 女の子はお店の人の了解を得て、お人形をうちに招き入れることができました。拍子抜けするほどに無関心なお店のレジ係の対応なのですが;; 女の子の家には、おあつらえむきのドールハウスがありハッピーエンドとなります。

そして最後の一文は人によってとらえ方様々と思います・・
「けれど、ちいさいおにんぎょうが なによりすきだったのはほかのおにんんぎょうたちと あそぶことでした」
私は、わが子の思い出と重なり胸が熱くなりました。
スーパーの冷凍庫の底をちょっと覗いてみたくなる素敵なお話です。

※1953年に創刊された〈岩波の子どもの本〉は2023年で創刊70年を迎え、リクエストの多かった作品のなかから7点が厳選され復刊されました。「まいごになったおにんぎょう」はそのなかの1冊 です。復刊された7冊はこちら

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


あおい目のこねこ
ねずみのくにを探して冒険にでた、あおい目のこねこ。こねこが出会うさまざまなできごとが、ユーモラスに描かれ、小さい頃に何度も読んだという方も多い人気の絵本です。

あおい目のこねこは、あおい目をばかにされ、イジメられ、ひどい目にあっても、
「な~に、こんなこと、なんでもないや」と意に介さず、(実際軽やかな線で描かれた表情や青い目がとてもチャーミングで悲壮感がありません。)
「なんにもたべないよりは、ましでした」の繰り返しの後、「そのむしは、くさくて、べとべとして、つかんだ足をふってもとれません。なんにもたべないほうが、ましでした」??!!!・・・笑

そして「おもしろいことをしてみよう。 なんにもなくても、げんきでいなくちゃ」と言ってねずみのくにを探しにいく。
(このセリフは、コロナ禍で大人も身にしみるところです)

1のまき、2のまきと話が進み、「またまたのぼって~」「またまたくだって〜」のくだりが子ども達は特にお気に入り。最後あおい目のこねこは、意地悪された黄色い目のねこたちにも、ねずみのくにのことを教えてあげるのですね。

文字数は少ないのに本のような形態になっていて、字が読めるようになったばかりの子どもが読む本としても、楽しく満足度が高いのではないでしょうか。
背表紙の色が目の色と同じブルーなのも素敵です。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


神の道化師
(絵本表紙より)ジョバンニ少年は、一文無しでみなし子。でも、すてきな得意技をもっていました。ジョバンニは、なんでも空中に投げあげてお手玉のようにまわすことができたのです。ソレントの町の人びとは、そのすばらしい芸にびっくり。あるとき、ジョバンニは旅芸人の一行に加わり、ほどなく道化の化粧をして、上手になんでも手玉にとれる少年としてイタリア中にひろく知れ渡るようになりました。

しかし年月は流れさり、ジョバンニは年老いてきました。しだいに芸能では衰え、喜んでみてくれる人も少なくなるばかり。ある日芸の最中に玉をとりおとしてしまったジョバンニは、人々のののしり、あざける声に追われて村を逃げだしました。
芸をすっぱりあきらめてしまったジョバンニは、子どものころのように、よその家の軒下にねむり、パンをめぐんでもらいながら、ふるさとソレントへとかえってきました。

クリスマス・イヴの日、とある教会にもぐりこんで、ひとねむりしていたジョバンニが目をさますと、教会の中は御子イエスにささげものをする信仰あつい人びとの列でいっぱいでした。やがて、美しいしらべも絶え、人びとが帰った後、ジョバンニは、おずおずと聖母に抱かれたイエスさまの像に近づいていきました。自分にできるたったひとつの、ささげものにしようと。そのときおこった奇跡は、この古くから伝わる民話を読む人の心に、深い感動を誘います。
トミー・デ・パオラの卓抜な再話と絵によるこの絵本は、芸術作品ともいうべき傑作です。

------------------- 30代で読んだ時に、ジョバンニの人生に寂しさを感じ、子どもたちに読めなかった絵本でした。20年たち...先月人に読んでいただく機会がありました。以前とは違ってとても温かい気持ちになり、ジョバンニの素敵な人生に拍手を送りたくなりました。子どもの頃に出逢った方も、同じように子どもの頃感じたといいます。人生経験のない子ども達の方が、余計な感傷が入らず本質にたどり着けるのかもしれません。
離れて絵を見ているとジョバンニのお手玉が動き出すようで、奥行のある背景もあらためて美しいなと思いました。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


あかいえのぐ
絵描き一家のお話です。
子どもはサラとサイモンとリチャード(赤ちゃん)の5人家族。
お父さんはいい絵を描くのですが、売れなくてお金にこまっていました。
「だいじょうぶだよ。もうすぐ、けっさくがかんせいするんだ。・・・それまでは ぎんの ティースプーンでも うってのりきろう」

サラとサイモンは 家のおてつだいをしながら 貧しくも幸せにくらしていますが、
近所に古本屋さんという楽しみの場も持っていて、ふたりは好きな本を読みながら 店のお手伝いをしたり、家のために絵を描いてお金をかせごうとしたりもするのでした。

ある日、いよいよ家に売るものがなくなり、お金がなくなってしまいます。
買い手の予約がついた大作が、あと少しで出来上がろうとしているのに、仕上げに必要な赤い絵の具がなくなってしまいました。
懇願するも画材屋はあと払いでは決して売ってくれず、お父さんはだまりこみ、お母さんは赤い目をして 赤ちゃんにきつくあたってしまうのでした。。。。もうおしまいだわ。
重苦しい夕食の時間がおわって、サラとサイモンはほっとします...

つぎの日、事態は好転して物語はハッピーエンドで終わるのですが
好転したのは、サラとサイモンの健気な行いによるものでした。

一家族を通して普通の人々の暮らしや、子どもたちの優しさ・視点が生き生きと描かれ、あたたかい読後感がのこります。
その家族構成から、父の大反対を押し切って画家になったアーディゾーニの実体験も見えるようなお話です。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


おまつりをたのしんだおつきさま
メキシコのオアハカ州に 伝わるお話です。
ひとびとが働く昼間は、お日さまが明るく空を照らし、
夜はお月さまが、人々が夢を見るのを 見守ってくれていました。
ところがある日、星たちのおしゃべりが お月さまの耳に きこえてきます。

昼間は楽しい遊びや おまつりがあるし きれいな色がたくさんある・・
お日さまの空に 引っ越したいなぁと。。。。これは大変!

お月さまは、星たちを引き留めるために 夜のおまつりを 計画しました。
お祭りは大成功でしたが、お月さまは ご馳走を食べすぎて 動けなくなり、
人々は時間が わからなくなり、とうとうお日さまが 出てきてしまいます。

しかし、この日は皆働く事が出来ず 畑も家の中もめちゃめちゃに 
なってしまいました。
後悔したお月さまは、またもとのように 夜の空に戻りました。
けれど、楽しかったあの夜が 忘れられず、いまでも時々 羽目を外すのです。

オアハカのひとたちは あさおきて 
おひさまと おつきさまの りょうほうが
そらにうかんでいるのをみると 
こういいます
「ゆうべは おつきさまが おまつりを たのしんでいたんだね」と。

絵本はメキシコらしい明るい絵で、お月さまがリボンやショールをかけていたり、
お日さまが帽子をかぶっていたり、愛嬌たっぷりで、日本のイメージとだいぶ違うのが新鮮です。
おまつりに協力する 大きなお人形のモヒガンガや、アルマジロやイグアナといった動物たち・・そして人魚まで。
ファローレス、パドリーノ、パぺルピカド、モーレやタマーレスといった、メキシコ独特の言葉が並び 読んでいて楽しく、興味をそそられます。

昼にうっすらと月が見えると、このオアハカのお月さまを思い出して 頬がゆるんでしまう人も多いのではないかな と思います。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


木をかこう/太陽をかこう
イタリアが生んだ世界的アーティスト、ブルーノ・ムナーリによる
木と太陽の描き方の本。
木をかこう------幹から遠くなるほど、枝は細くなり、枝は2本、3本と規則的に伸びている。気候が変われば折れたり傾いたりする。規則から外れてすきかってに伸びている枝もある。まっすぐの枝、ぐにゃぐにゃ曲がる枝。上に伸びる枝だけでなく下に伸びる枝もある。
カラマツ・ニレ・サクランボ・イトスギ・バラモミ・ハコヤナギ・セコイヤの樹形の違い、 コルク、シラカバなどの木の皮の違いをみてみよう。
幹が1本の柱とすると、枝の部分を集めたときの太さは元の幹の太さと同じになるんだろうか?
様々な問いかけとともに観察眼を養いつつ、絵をかくところから紙や針金で木を作るところまでみせてくれます。

太陽をかこう------ギラギラと照りつける太陽が恨めしいほど暑い日が続きます。
エネルギーの塊のような太陽はどうやって描けばいいの?
空に輝く太陽を科学者や芸術家たちはどんなふうにとらえているのでしょう。
素敵な太陽がいっぱい。

どちらも読んだ後、わくわくして木や太陽を描きたくなります!
ムナーリはデザイナーとしての活動のほか、子どものための絵本や遊具を制作するなど、造形教育にも深く関わりました。
大人もハッとさせられる視点と絵を描くヒントを与えてくれる楽しい絵本です。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


じてんしゃにのるひとまねこざる/戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ
きいろいおじさんに、ほしくてほしくてたまらなかった自転車をもらったジョージはさっそく町へ出て、手を放したり、ハンドルをひっくり返したりして大はしゃぎ。出逢った男の子に配達の手伝いを頼まれるのですが、あろうことか配達するはずの新聞紙で舟を折って川に浮かべて遊びはじめてしまいます。川には新聞紙の舟がいっぱい!そうこうするうちに大きな石につまずき自転車がぺしゃんこに。今度はサーカス団のトレーラーに乗せてもらうことなり。。。ハプニングはまだまだ続きます...。

まる1ページ割いて舟の折り方が載っていたり、動物もたくさん出てきてお話がどんどん進むので、小さい子どもでも飽きることなく楽しめます。そしてどんなにやらかしても、最後にはちゃんときいろいおじさんが迎えにきてくれる、この安心感。

ひとまねこざるシリーズはたくさん出版されていますが、レイ夫妻のオリジナルは『ひとまねこざるときいろいぼうし』『ひとまねこざる』『じてんしゃにのるひとまねこざる』『ろけっとこざる』『たこをあげるひとまねこざる』『ひとまねこざるのABC』『ひとまねこざるびょういんへいく』の全7作品です。

レイ夫妻はドイツ生まれのユダヤ人で、ドイツの軍隊が攻めてくる数時間前に自分で組み立てた自転車に乗ってパリを脱出しました。わずかな荷物のなかにあったジョージの原画が絵本になるのは、翌年アメリカでのこと。『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ』には、ふたりの生い立ちや奇跡の逃避行が、日記や写真、イラストをまじえて綴られています。底抜けに明るいジョージのお話しの裏にこんなエピソードがあったなんて・・・ジョージに出逢えた私たちは幸せ者です。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)


                                    


ねこのオーランド―
36x 26 の大型絵本。マーマレード色のオーランドと奥さんのグレイス、かわいい3兄妹のネコファミリーの物語。長くイギリスで読み継がれてきた絵本です。キャンプにいったり、海外にいったり、農場経営したり、、、擬人化されていながらやっぱり猫なのが何とも可笑しい。

ページいっぱい豊かな色彩で表情豊かに描かれるダイナミックなネコたち・・・(作者はたくさん猫を飼っていたそうです。)筋肉の盛り上がりまで描かれ、この動物が本来持つ野性味が感じられるのもいいです。

長めのお話なので読み聞かせには使えませんが、家でゆっくり読んであげるのに最適。大きな絵本いっぱいにのびやかに描かれる絵が素晴らしく、絵の力で集中力が途切れることなく楽しめます。

作者のキャスリーン・ヘイルは90歳になってから初版の絵をすべてを描き直していますが、その筆力は衰えることなく101歳で亡くなりました。生命力あふれる絵から元気をもらえること間違いなしです。

(もえぎ野web文庫 座間彰子)