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へんしんへんしん
見開きのページから、びっくりする様な変身姿がどんどん登場します。「へんしん」と言うとアニメ等のヒーローにでもと思われるかも知れませんが、この本は子どもが大好きな犬や鳥や魚だけでなく、テーブルの脚や噴水、雪だるまにまでなってみようと誘っています。今まで気にもとめなかった身近なものになりきり、そこから楽しい世界が広がっていくことが実感されると思います。余り夢中になると子どもから、「さあ○○になってごらん」とせがまれるかもしれませんが…。 (もえぎ野文庫/宮崎洋子)

ペンギンのヒナ/><br />
ギンのヒナ
皇帝ペンギンの子育てを紹介する科学絵本です。平易なことばで、小さなこどもにもわかりやすく、科学的にペンギンの子育ての生態を説明しています。たまごを産むのはお母さん。では、その後は?絵は写実的でありながらも、美しく、作者のペンギンへの温かい眼差しが心地よく伝わってきます。厳しい自然の中で、おとうさんとおかあさんはどうやって協力するのでしょうか?この一冊で、あなたも「皇帝ペンギン博士」になれることうけあいです。そして何より大きな家族愛に包まれて癒されます。動物園のペンギンをみる目も変わりそう。寒い冬のうちに、親子でぜひ読んでいただきたいおススメの一冊です。(もえぎ野文庫/H.M)

したきりすずめ
この物語は「したきられすずめ」の話です。雀をこのうえなく可愛がる愛深いじいさまと欲が深くて嫉妬深くて自分中心のばあさまが、一羽の雀と関わりながら緊張感と安心感を繰り返すストーリー展開のなかで、人の道をさりげなくあふれんばかりに感じさせてくれます。読後に「あーよかった」と思わせてくれるとても印象的な本です。日本人の根底にある道徳がスラリと描かれています。日本人でよかったと思われるあなた。ぜひ一度幼な心にもインパクトのあるこの一見地味な絵本を手にとってみて下さい。(もえぎ野文庫/宗像恵子)

はっぱのおうち
 庭で遊んでいたら、突然の雨。さちちゃんが葉っぱの家で雨宿りしていると、 かまきり、蝶などの虫たちも雨宿りにやって来て…。 自分だけの秘密の空間で虫と出会い、心を通わせていく様子が、子供らしく 微笑ましい絵本です。林明子さんの描くさちちゃんの愛らしい豊かな表情が 魅力的。雨の続く時季にも、ほのぼのとした優しい気持ちになれますよ♪ (2歳~) (もえぎ野文庫/野阪麻代)

だれかそいつをつかまえろ

  アドルフさんのお店から、ピクルスが逃げ出した。「だれか、そいつをつかまえろ!」と大声で叫びながら追うアドルフさん。その声を聞いて、次々と…。
    思わず、“ぷっ”っと笑ってしまう文章は大人でも楽しめま(もえぎ野文庫/飯島厚子)
けます。永遠に続くかと思われたおいかけっこの結末は…。ぜひ、読んでみてください。 (もえぎ野文庫/飯島厚子)


こんなしっぽで なにするの?

  色彩豊かなクオリティーの高い<切り絵>で、動物の生態が分かりやすく楽しめ、当てっこゲーム的遊び心満載の科学絵本です。いろいろな動物が、鼻・耳・しっぽ・目・足・口を使ってどんなことをするんだろう。まず、5種類の動物の鼻の部分だけが描かれ、ページをめくるとそれぞれの全身像と鼻を使った独特の行動が一行の平易な文で紹介されています。耳・しっぽ・・・と続き、巻末はそれら30種の生き物の生態を解説した魅力的な図鑑になっています。ゾウ・ウサギ・ワニなどのお馴染みな動物が登場するだけでなく、「カモノハシは鼻でどんなことするの?」「水鉄砲で昆虫をつかまえるのは誰?」「コオロギの鳴く回数からその時の気温を割り出す方法(計算式)」まで分かっちゃうという優れ本。読みながら繰り広げられるであろう“子どもとの会話”を想像しただけでワクワクします♪(もえぎ野文庫/長島順子)


恋する日本語

  読書の秋。オススメ絵本にプラスして大人向け“心のビタミン”なる一冊はいかがですか。 「おくりびと」の脚本で有名な放送作家・小山薫堂氏が、いまの日常生活ではほとんど使われていないけれど美しくお洒落な日本語を紹介している本です。あえか・涵養・紐帯・恋水・僥倖・赤心・・・など、その言葉の意味をひもとき、彼独自の解釈でイメージを膨らませて表現したショートストーリーとそれにマッチした素敵な絵で構成されています。一話を読むのに1分もかからないけれど、そこから自分だけの大人の時空を愉しめる不思議な力があります。おやすみ前や隙間時間にサクッと読めて,ほわっと温かい気持ちになれたり、癒されたり・・・、読者に心豊かなひとときを約束してくれると思います。35の掌編をぜひご堪能ください♪(もえぎ野文庫/長島順子)

十二支のお節料理

年末が近づくと読みたくなる本です。年の神様に命じられて、十二支の動物達が お正月の準備を始めます。それぞれの動物の担当する仕事がぴったりで、楽しく なります。絵の色づかいも華やかで、新年の雰囲気がとてもよく出ています。忙 しい年末の中で、ひととき、お子さんとお正月を迎えるということについて、じ っくり話してみてはいかがですか。(もえぎ野文庫/大岡有香)

ととさん

腹が痛くてたまらないととさん。「かかさん、かかさんどうしたらいいかのう。」「おてらのおしょうさまにきいてみなさるといい」とかかさん。和尚さまは「腹に虫がいるから蛙をのむといい」とアドバイス。ととさんはいわれた通りに蛙をのみこみます。ところが今度は飲み込んだもののせいで腹の具合が悪くなり、「かかさんやぁ~」と訴えます。その後ととさんは蛇、雉、猟師、鬼と次々にのみこんでいきますが、さて最後は……?!!飲み込むものはどんどん大きくなり、子どもたちはお話にぐいぐいひきこまれます。そして最後は楽しい結末にすっきり。かかさん、ととさん、和尚さまの温かいやりとりが微笑ましく何度読んでも楽しい絵本です。絵は画面いっぱいに大胆な構図で描かれ、地味な配色のところどころに赤が入る印象的な色づかい。ユーモラスな表情で生き生きと描かれた齋藤隆夫氏の絵もとても素敵でおススメです。(もえぎ野文庫/座間彰子)

わたしとあそんで
  クリーム色の地にやさしい線の絵に春の暖かさを感じる絵本です。女の子がはらっぱに遊びに行き、バッタ、かえる、かめ、りすなどに「あそびましょ。」と声をかけます。すると、声をかけた動物たちは、みんな逃げて行ってしまいます。でも、池のそばの石に音をたてずに静かにこしかけていると、動物たちがもどってきます。幸せそうな女の子の笑顔。出かけた時から、裏表紙まで、おひさまもやさしく見つめてくれています。(もえぎ野文庫/森田)

さくら
  一本のソメイヨシノの一年間が、リズミカルな文と絵で描かれています。満開の桜の蜜を吸いに来るひよどりとすずめ。かぜに吹かれて散るはなびら。そのあとから緑の葉っぱが出てきて、大きく茂ります。夏には、虫に葉っぱや木の露をごちそうし、とてもにぎやかになります。そして秋になり、赤や黄色におめかしをし、北風が吹きだすと葉っぱとさよならします。寒い冬には、静かに春を待ち、それはそれはみごとな花を咲かせます。(もえぎ野文庫/森田)


ゆかいなかえる
  おはなし会で表紙をひらくと、様々な表情や大きさのおたまじゃくしに「わあ、おたまじゃくしだ!」という声が上がります。みずのなかのゼリーのようなたまごは、さかなに食べられてしまいますが、4つのたまごだけながれていって、おたまじゃくしからかえるになります。このかえるたちが、みずにもぐったり、競争したり、かたつむりのかくしっこをしたりと元気に遊びます。 ところがさぎが飛んできて、さあ大変!でも食べられたりなんかしません!このかえるたちの表情がとてもいいのです。 かえるの声が聞こえてくるようになると、読みたくなる絵本です。(もえぎ野文庫/森田)

ひとしずくの水
  ひとしずくの水の落ちる瞬間、表面張力で水に浮くピン、びんの中に入った青い色の水の動き。 ガラスのコップの表面についた水のしずく、雲がどんなふうにできるのかの実験。 雪の結晶、クモの巣にできた露のしずくの中に映るさかさまの風景。 空と海、青い地球、すべての写真ひとつひとつが美しい! ひとしずくの水の終わりのない旅から、自然というもののおもしろさ、科学的なもの の見かたを知ることができます。 子どもたちの大好きな「ミッケ!」シリーズの作者の写真絵本です。 (もえぎ野文庫/森田)


しょうぼうじどうしゃじぷた
  ふるいジープを改良したちびっこ消防車のじぷた。大きな火事では出動も出来ず、周りの大きな仲間達が羨ましい毎日。ところがそんなある日、じぷたにしか消せない火事が…。 消防署で繰り広げられる『はたらくくるま』たちの活躍が楽しく描かれています。レトロチックなイラストがまた風情あり、長い年月子ども達の背中を押してくれているなぁと感じます。 途中に署長さんの「よし、じぷただ。たのむぞ!」という台詞があり、この一言がたまりません!子ども達に読み聞かせをする際には、ぜひここをポイントに(笑)オススメします。(もえぎ野文庫/篠崎)


村の英雄~エチオピアのむかしばなし
  アディ・ニファスという村の12人の男達が町へ粉を挽きに行った帰り道、ふと人数を数えてみると…11人しかいない!どこに行ったんだ!12人番目の男! いなくなった一人が村の英雄へと変貌を遂げていく様を綴った、おかしなおかしなお話しです。 大騒ぎをする大人達に、女の子が冷静に「粉袋が12ある」と指摘するのも可笑しく、大人達がどう返答するのかほくそ笑みながら読み進んでいくと…。思い込みが歴史を作るんですね! お話しの最初に、11人になっている理由は出てくるのですが、それは見てのお楽しみ。どうぞ皆さんこの本を手にして、エチオピアワールドにしばし入っていただきたいと思います。 ちなみにこの本は、『しょうぼうじどうしゃ じぷた』の作者がエチオピアの民話「山の上の火」をもとに書き起こしたお話しです。 (もえぎ野文庫/篠崎)

さわってごらんひとのからだ
  「ひとのからだにさわるときって どんなとき?」から始まる写真絵本です。 なかよしの男の子と女の子が、ゆびきりしたり、怪我したところをさすったり、手をつないだり。だけど、けんかをしたときは絶対にさわらせない。人間のほかにもさわってきもちいいものいっぱい。でもやっぱり、さわるならいちばん大好きなひとがいいな。おはなし会ではここで「おかあさん!」と子どもたちから声が上がります。さわらせてくれる時期は、本当にあっという間に過ぎてしまいます。いっぱいいっぱいさわって、さわらせてあげましょう。
                                                                    (もえぎ野文庫/森田)

ひとしずくの水
  81の国や民族から集めた民話集です。一つ一つのおはなしに短い解説があり、見返しにある地図の国や島を示す番号が書いてあるので、その場所を確認することもできます。目次には、おはなしのおおよその時間も書いて あるので便利です。 おはなしも「けものや鳥や虫が出てきて、ちえをはたらかせる話」、「欲ばりや心の まがった者がそんをしたり、正直者がとくをする話」、「王子や王女がでてきて、こんなんと戦ってしあわせになる話」など全部で八つの章に分かれています。各章の終わりに母のページがあり、民話についての解説も付いています。また、藤城清治のカットやカラーの影絵も楽しめます。 「ヤギとライオン」、[アナンシと五]、「マメ子と魔物」「岩じいさん」など、とてもおもしろいおはなしばかりです。3歳からおとなまでいっしょに楽しめる本です。 (もえぎ野文庫/森田)

きつねにょうぼう

  山あいの田んぼを作っている、貧乏なお百姓さんの所に、女狐が可愛いおなごに化けてきてお嫁さんになり、子供が産まれた。 ある椿の花盛りのひ、機織り窓からその光景をみた女房は、見事さに圧倒されて、きつねのしっぽを出してしまった。  それを見たわが子が母はきつねだと知った途端、母は山に戻ってしまう。いくら待っても母は戻らず、おとうと子供は途方にくれるが、ある田植えの日、母が再びあらわれて、夫と子供がいつまでも、豊かで幸せであるように、稲穂をむくといくらでも、真っ白い米が出てくる田植えをしてくれた。 それが終わると朝焼けの中、きつねの姿で大きく一なきして山に帰ってしまった。 その御陰でふたりは、とても楽に暮らせるようになり、雪の冬も、かぜひとつひかず、ぴんしゃんして、元気で暮らした、とな「いちご さけた どっぺん」の不思議な言葉で終わる再話です。 四季の山の風景、稲穂の風景、つばきの花の木の圧巻、きつね女房が山へ帰る時の朝焼けの美しさと悲しみの表情は、何度みても感動してしまうのです。 美しい日本の原風景が胸に焼付き、四季折々の日本の自然美を表した絵本です。 (目が生き返ります、見てね) (もえぎ野文庫/宗像惠子)

マイク・マリガンとスチーム・ショベル

   スチーム・ショベルの名前は、メアリ・アンです。マイク・マリガンはこのメアリをとても自慢に思っていて、手入れもよくしていました。メアリは100人の人間が1週間かかって掘るくらい、1日で掘ってしまうとマイクは、いばっていました。そして、見ている人が多ければ多いほど仕事は進みます。りっぱな運河を掘ったり、汽車が通れるように山を切り開き、ハイウェイを作るため、一生懸命働きました。 ところが、そのうち、新式のガソリン・ショベルや電気ショベル、ディゼル・ショベルが発明され、スチーム・ショベルの仕事をみんな取り上げてしまいました。そこで、マイクとメアリは、自分たちの仕事を探す旅に出ます。 メアリの表情がとても楽しい絵本です。働く車が大好きな子は、おはなし会で、どんどん本に近づいてきます。(もえぎ野文庫/森田)

干し柿

   青空の下にたくさんの実をつけた柿の木の写真から、この絵本は始まります。手で皮をむき、縄を作り、その縄で柿をつなぎます。それをまた、ひもでつないで、のきしたに1ヶ月半から2ヶ月間干します。干された柿は、太陽の力、風の力、いろいろな自然の力を受けて、だんだん小さくなっていきます。そこに人の力も使って、ときどき指でもんでやわらかくして、しぶみを抜けやすくします。小さく、しわしわになったら、ひもをはずしてわらの上に平らにして、10日間くらい干してできあがり!最後は、えだ先にひとつだけ残された柿の実で終わります。これは、人から自然への感謝のしるしや、次の年もたくさん実るようにというおまじないだと言われています。自然の色の美しさや、秋の里山の人と自然のつながりを感じられる絵本です。(もえぎ野文庫/森田)

おもいでのクリスマスツリー

      北米のアパラチア山脈の奥に、松ヶ森という小さな村がありました。松ヶ森の教会では、毎年交代で決まった家がクリスマスツリーをたてるのです。 ある年、ルーシーの家にこの番が来ました。春のはじめに、パパとルーシーは高い岩山にはえたバルサムモミを選び、ルーシーの赤いリボンを結びました。 夏になるとパパは、海の向こうの戦場へ行ってしまいました。材木を切り出して生計を立てていたルーシーの家は、収入がなくなり、自分達で野菜を育てたりして、がんばってくらしていました。秋になりパパから、戦争が終ったのでクリスマスには帰れるでしょうという手紙が来ます。 ところが、クリスマス・イウ゛まであと一日になってもパパは帰って来ません。ルーシーは学校でクリスマスの劇の練習にはげんでいました。ルーシーは、天使の役です。パパが教会へクリスマスツリーを持って行く年だからです。羽のある天使に見えるような大きな袖のある服も作らなくてはなりません。パパが帰ってこなくては、服を作る布を買うお金もありません。その夜には牧師さんが訪ねて来て、来年の番の人にクリスマスツリーの木を用意してもらおうと言います。ここでルーシーのママは「うちでツリーをたてさせていただきます。」と毅然と言います。さあ、ルーシーのママはどういう行動にでたのでしょうか。ぜひ、手にとって読んでみてください。バーバラ・クーニーの絵がおはなしにピッタリあってとても素敵です。(もえぎ野文庫/森田)

かあさんのいす
      かあさんはブルータイル食堂で働いています。ウエイトレスをしています。わたしもときどきお手伝いをして、お金をもらうとかならずはんぶんだけ、あのびんに入れておきます。あのいすを買うために。。。 家族は、かあさんとおばあちゃんと私の3人。ある日平和な日常から一転、家を火事で失います。全部焼けてしまった家にのこされたのは灰と燃えカスだけ。真っ黒なページに言葉を失います。なんにもなくなったわたしたちは、引っ越しをした先で近所の人に様々なものを届けてもらって生活を助けてもらっています。 小さな椅子に座り、食卓に寄りかかって疲れて寝ているかあさんの姿は生活感たっぷり。濃い化粧にアクセサリーをつけパーマをかけたロングヘアー。ピンクのワンピースに赤い靴。疲れてだらしなく座るかあさんが絵本ではちょっと新鮮です。 疲れたかあさんがゆったり休めるように、アパートにすごくふわふわで、きれいで、大きいソファーを買おう。それはバラのもようがついたビロードがかぶってなくてはいけない---。 全ページ華やかに彩られている縁取りは、どんな時でも明るくきれいなものに憧れる気持ちを持ち続ける、わたしとかあさんをあらわしているようで、読み手にも元気を与えてくれます。不運に襲われた家族に、暗い湿っぽさは全くありません。念願かなってのラスト、世界一素敵なソファに座り、安心しきってかあさんに抱かれるわたしの寝顔の可愛いこと。かあさんの幸せと自信に満ちあふれた素敵な横顔。実際に司書の方に読んでいただいたのですが、自分一人で読んでいただけのときよりもずっと心に沁みました。 翻訳は佐野洋子さん。ベラ・B・ウイリアムズは「かあさんのいす」に続けて続編「ほんとにほんとにほしいもの」「うたいましょう おどりましょう」を発表していますが、こちらもおススメです。高学年向き。(もえぎ野文庫/座間彰子)

いっすんぼうし
   だれもがよく知っている日本の昔話です。 いっすんぼうしは、小さなからだで都へ上り、鬼をやっつけてしまいます。 おわんをかさにし、箸をつえにし、おばあさんからもらった針を刀にし、 旅のしたくをととのえたいっすんぼうしのりりしいすがたに、強い決意を感じます。 都へ上る川への道をありに尋ねる場面では、たんぽぽとつくしの野原のむこうには、 川が見えているよ、がんばってと思わず応援してしまいます。 都の人々や大臣の御屋敷の様子などが、しっかりと描かれています。 美しい姫のお供で清水寺へ行く道中の桜の花は、なんてきれいなのでしょう。 突然襲ってくる赤鬼、青鬼、黒鬼の表情、鬼と戦ういっすんぼうしの動きは、とても 迫力があります。 「うちでのこづち」でりっぱな若者になったいっすんぼうしにうっとりします。 美しい日本画の世界にたっぷりと浸れる一冊です。  おはなし会で、読み終わった後、こどもたちも満足そうな笑顔を見せてくれます。 (もえぎ野文庫/森田)

ハンダのびっくりプレゼント
   ケニアのルオ族の子供たちをモデルしたお話です。 ハンダが、お友達のアケヨにおいしそうな果物を届けるお話で、 その果物は本当においしかったようで、・・・。 ハンダの可愛らしい独り言と、絵が別々に進んでゆきます。 「ハンダはアケヨに無事果物を届けられるのかしら。」 とハラハラしながら一気に読める本です。 鮮やかな絵が、楽しさを盛り上げてくれます。(もえぎ野文庫/M・K)

ライラはごきげんななめ

   ライラはちょっとお姉さん。学校にも通ってるし、バレエだってクラスで2番目に上手。 今日は朝から最悪なことが続いて、「もう、さいあく」な気分でバレイ教室に向かい、先生に 「辞めます」宣言してしまいます。 でも、ずっと不機嫌でいるのもなかなか難しくて・・・。 ライラが本当のお姉さんに近づく一日のお話で、ライラの過激な本音が楽しく、元気な線と やさしい色彩が微笑ましい一冊にしてくれていると感じました。 この絵本は赤木かんこさんの仰った、「みなさん、事件です。初めて大人が大人らしく振舞 ってます。」の一言で惹かれました。子供と読みながら、ライラの周りの大人の様になれた らいいなぁと思える絵本でした。(もえぎ野文庫/M・K)

こすずめのぼうけん
   こすずめは、おかあさんすずめといっしょに、きずたのつるのなかにできた巣の中 にすんでいました。こすずめに茶色の羽が生え、翼をぱたぱたさせるようになると、おかあさんすずめが 飛び方を教え始めました。こすずめは巣のふちに立ち、胸をそらせ、羽をぱたぱたやり、飛び立ちます。 すると、驚いたことにちゃんと飛べました。おかあさんは、巣から石垣まで飛んで今日の練習はおしまいといいます。 ところが、こすずめはもっともっと遠くまで飛んでいける、ひとりで世界を見てこられると思い、いっしょうけんめい 羽を動かします。はじめのうちは飛ぶのを楽しんでいましたが、やがて羽が痛くなり、頭まで痛くなってしまいます。 さあ、どこかで休まなくてはなりません。最初に見つけた巣には、からすがいて、 「かあ、かあ、かあ」と言えるかと聞かれ、言えないというと中へは入れてもらえません。それから、やまばと、ふくろう、かも、次々と巣をたずねても、 「ちゅん、ちゅん、ちゅん」としか言えないこすずめは、休ませてはもらえません。
  あたりが暗くなり始めたころ、おかあさんが探しに来てくれました。おかあさんの背中におぶさり、やっと、きずたのなかの 巣に帰ることができました。おかあさんからはなれて、幼稚園や小学校に入った子どもたちは、こすずめになりきって聞いています。巣に帰ったこすずめが、 おかあさんの翼の下で眠ると、ほっとした表情をみせてくれます。 それぞれの鳥の巣を作る場所や材料、鳴き声も楽しく描かれています。(もえぎ野文庫/森田和子)

おおきなきがほしい

   「おおきな おおきな 木があると いいな。ねえ おかあさん。」 窓から顔を出したかおるの大きな木の空想がここから始まります。
うーんと太い木にはしごをしばりつけて、かおるの思いもどんどん上へと登っていきます。 かおるがもぐりこめるくらいの洞穴がでてきたり、さらに木の上の方にはツリーハウスまで登場します。 かおるが木を登り始める場面から、絵も本文も90度向きがかわるので、読者は絵本の向きをかえて読むことになります。 すると、不思議とかおると一緒に木を登っていくような気持になります。
  5月のさわやかな風が通りぬけるような絵本です。 子供はもちろん、大人もかつて1度は空想したことを思い出してわくわくした気持ちにさせられます。 見返しのかおるのおおきな木の全体像図をながめるのも楽しいです。 (もえぎ野文庫/佐藤靖子)

木

   彫刻家佐藤忠良さんのデッサンと、詩人木島始さんの詩がぴったりと合った絵本です。 一本のおおきな木の太くたくましい幹の根元と、からみあうねっこの見開きのページ からは、自然の力強さを感じます。空に向かって伸びる幹や枝の線の美しさ、幹にできたこぶの硬さがデッサンから伝 わってきます。この木のこぶからがまんのうたがきこえてくるに、なるほどと納得してしまいます。 並んで立つ木々は、本当に語りかけてくるようなきがします。 小枝の先から伸びる木の芽や若葉のやわらかいみどり色にほっとします。
  最後のページにとても楽しい仕掛けがあります。 若葉の美しいこの季節に、ぜひ、手にとってみてください。(もえぎ野文庫/森田和子)


こいぬがうまれるよ
   わたしのとなりのいぬにあかちゃんがうまれるの。うまれたてのいぬのあかちゃん、わたしのもらういぬのなまえは、ソーセージ。 てのひらにすっぽり入ってしまうくらい小さくて、はかりにのせても、針は少ししか 動かない。本当にかわいい。目も耳もふさがっている。でも、おっぱいはちゃんと飲む。 2週間たつと、目があいて、耳もあいた。1か月過ぎるとおすわりができるようになり、歩き出す。歯も生えて、お皿から食べ られるようになる。そして、おかあさんから離れて、外で元気に遊ぶようになる。 2か月待って、やっとわたしのところへ来た。
  おはなし会で、子どもたちは、1ページ1ページじっくりと見ます。うまれてきたと き、「うんちみたい。」と、言っていた子も、おかあさんいぬにきれいにしてもらったこいぬに、思わず「かわい いい。」と、にっこりします。 こいぬの誕生から成長を見守り、表情やしぐさにびっくりしたり、楽しんだりできる 1冊です。裏表紙のこいぬののったはかりの針が、大きく動いているのも、子どもたちは見逃し ません。(もえぎ野文庫/森田和子)

じゃぐちをあけると

   表紙に、大きなじゃぐちの絵があります。昔ながらの手でしっかり回して、開け閉めするじゃぐちです。おはなし会で、「これ、何かわかりますか?」と聞くと、ちゃんと「じゃぐち!」と答えてくれます。保育園、幼稚園、小学校なども、手を出せば、水が出るようになっているのに、よく知っています。
さあ、「じゃぐちをあけると、水がでる。」そして、コップをあてると、水の滑り台になったり、トンネルになります。次に、スプーンをあててみると。今度は、スプーンをひっくり返してみると。水は、どんどん形を変えます。こども達は、それぞれに、いろいろな物を声に出して言ってくれます。ページいっばいに描かれたフライパンに、水が波打ち、本当の海のようです。 最後に、じゃぐちをしっかり閉めて、はい、おしまいです。
じゃぐちの先に、ちょっと見える水のしずくも、こども達は、見逃しません。「ちゃんと閉めてない!」と叱られます。 この一冊で、とても楽しい時間が持てます。(もえぎ野文庫/森田和子)




フランチェスコとフランチェスカ

   靴が買えない貧しい少年フランチェスコと女の子フランチェスカのお話。 フランチェスコはある日くつ屋のショーウィンドウで、名前がそっくりの女の子フランチェスカと出会います。 裸足だったフランチェスコは恥ずかしくて、すぐにその場を去りますが、以来可愛いフランチェスカのことであたまがいっぱい。
カーニバルの時期になりました。着ていく服がないと落ち込むフランチェスコに、おばあさんは古着をうまく生かし、盗賊の衣装を仕立ててくれました。 カーニバルで、天使のかっこうをしたフランチェスカをみつけ、嬉しくて声をかけると、フランチェスカもにっこり微笑みかえしてくれました。自分を覚えていてくれたことに天にも昇る気持ちのフランチェスコ。ところがお金持ちのウンベルトに赤いビロードの衣装と盗賊の衣裳を交換してほしいと頼まれ、フランチェスコはウンベルトのかっこいい赤い靴に惹かれて承諾し、衣裳を交換してしまいます。ウンベルトは悪さをして追いかけられている身でした。フランチェスカは盗賊の衣裳を着たウンベルトをフランチェスコだと思い込み、一緒に楽しくダンスを。一方本物のフランチェスコはウンベルトと間違えられて追っ手につかまり、地下室に閉じ込められてしまいます。さて、その後の2人の運命はいかに?!!
舞台はイタリアミラノ。フランチェスコとフランチェスカの清々しい恋心に温かく微笑ましい気持ちになります。 全ページに挿絵が入り、低学年から高学年まで、大人も楽しめるお話だと思います。 今は絶版となっていますが、図書館で借りられますので是非どうぞ。 (もえぎ野文庫/座間彰子)


ちいさなヒッポ


   ヒッポはちいさなかばの子どもです。いつもおかあさんかばと一緒にいて、そばを 離れたことがありません。
大きくたくましいおかあさんと一緒にいれば、怖いものなどありません。昼の間は、 温かい砂地に重なりあったり、日向水に浮かんだりして、眠って過ごし、日暮れになると、草地へ行って草を食べます。
そのうち、ヒッポはおかあさんからかばの言葉を教わり、何度も何度も練習します。そして、草原のしまうまに話しかけ、仲間のちいさなかばに「こんばんは」と、あいさつもできるようになります。
 ある日、ヒッポは大人のかばたちが、静かな川の温かい泥に埋まって眠っていたと き、ひとりで上のほうへ行ってみました。そのとき、 おおきなわにがヒッポにそっと近づいて来て、ヒッポのしっぽにかみつ き、水の底へ引っ張り始めます。
ヒッポは、なんとか「たすけて!」と叫びます。
するとおかあさんがその声を聞きつけて、助けに来ます。おかあさんは大きな口にわにをくわえて、振り回し、放り投げました。
わには悲鳴を上げ、ヒッポを放しました。こうして、ヒッポは助かります。
 表紙を開いたときから、美しい水辺の景色がやさしい色調でひろがります。草や木 の一本一本、動物たちの動きや表情が、版画で生き生きと表されています。
 子どもたちは、大好きなおかあさんと自分のことのように、ハラハラドキドキして 聞いていますが、最後には本当にほっとした表情を見せてくれます。(もえぎ野文庫/森田和子)


にぐるまひいて

   10月、とうさんは荷車に牛をつなぎます。それから、家じゅうみんなでこの一年間 みんなが作り育てたものを積み込みます。

4月にとうさんが刈り取ったひつじの毛を詰めた袋、とうさんが刈り取ったひつじの 毛をかあさんが紡いで織ったショール、かあさんが紡いだ糸で、むすめが編んだ指なし手袋5組、みんなで作ったろうそく、 亜麻から育て仕上げたリンネル、とうさんが切り出した屋根板の束、息子が料理ナイフで作った白樺のほうき。野菜畑から掘り出したじゃがいも、りんごをひとたる、蜂蜜と蜂の巣、かぶとキャベツ、3月にかえでの樹液を煮詰めてとったかえでざとうの木箱詰め。 それに放し飼いのがちょうから子どもたちが集めた羽一袋。
 とうさんは牛を引いて、丘を越え、谷を抜け、小川をたどり、農場や村をいくつも 過ぎて、ようやくポーツマスの市場へ着きます。この秋の景色のなんと素敵なこと。
ポーツマスの市場でとうさんは、家族が作った品物を売り、最後に牛も売ってしまい ます。こうして手にしたお金でかぞくの必需品を買い、家に帰ります。 そしてまた、家族のくらしが始まります。
 古き良き時代のアメリカの生活が、描かれた絵本です。人が自分の手で物を作り、 自然とともに生きていたことを実感します。秋になると手に取りたくなる1冊です。 (森田和子)


リベックじいさんのなしの木

   秋になるとかごいっぱいに梨をいれて、「なしをひとついかがかな」と道行く子どもたちに 優しい笑顔でふるまうリベックじいさん。
そのおじいさんの死は村の人々をひどく悲しませました。
欲張りなあととりむすこは、なし園を独り占め。しかし、おじいさんはちゃんと先を見据えて土地の子どもたちに、 美味しいなしの実を残すための遺言を残していたのでした。
  リベックじいさんのなしの木は、ドイツのハーフェルラントという土地を舞台にした 美しい叙情詩です。この詩がきっかけとなり、伝説のなしの木の話は、世に広く知られるようになったそうです。 味わいのある版画がリベックじいさんの人柄を見事に表しています。豊かなめぐみを与えてくれる、おじいさんのなしの木に心が温かくなる絵本です。(座間彰子)

ジルベルトとかぜ

   「ぼくはジルベルト そして これは ぼくとかぜのおはなし」で絵本が始まりま す。戸口から「おーい」とかぜがよぶと、ぼくは風船をもって外へかけだします。する と、かぜはふわふわ空にうかべていたのに、突然さっと取り上げて木の上にもっていって、もう 返してくれません。
かぜは、干してあるいろいろな洗濯物と遊ぶのも大好きです。それから、かぜは傘 が好きです。ぼくがさしている傘を取ろうとして、ぼくが放さなかったら、壊してしまいました。 牧場の木戸を押し開けたり、閉めたり、ゆすったりしますが、ぼくが木戸に上ると、ゆすってはくれません。
  でも、秋になってりんごが実ると、かぜは、木の下のぼくにりんごを一つ落としてくれます。凧揚げ、帆船、風車、シャボン玉をするときには、いっしょに遊んでくれるかぜですが、落ち葉を掃いて山に積むと、葉っぱをすっかり撒き散らしてしまいます。
時々、かぜはとても強くなって木を折ったり、柵を壊したりします。そんなかぜも、 疲れてしまって遊んでくれないときがあります。そんな時、ぼくは「ねえ かぜくん! きみどこにいるの?」と聞くと、「しゅ うー」と返事をして枯れ葉を一枚舞い上がらせてどこにいるか教えてくれます。
 元気なジルベルトが、かぜと一緒に遊ぶ様子が、とてもいきいきと描かれています。地味な絵本ですが、白が効果的に使われています。冷たいかぜが吹いて来ても、この絵本を思い出すと、ちょっと笑顔になってしまいます。 (もえぎ野web文庫 森田和子)

アンナの赤いオーバー
   表紙を開くと青いオーバーを着たアンナが立っています。次のページには、戦争で破壊された建物と荷物を抱えた多くの人々が歩いています。 「戦争が終わったら、新しいオーバーを買ってあげようね。」去年の冬、おかあさんが言いました。アンナの古いオーバーは擦り切れて小さくなっていました。 しかし戦争が終わっても、お店は空っぽで、オーバーもなければ食べ物もありません。それにお金をもっている人もいませんでした。
  おかあさんはどうすればいいか考えました。うちにはお金は無いけれどもすてきなものがいろいろあります。金時計は羊の毛と取り換え、ランプで羊毛を毛糸に紡いでもらいました。毛糸はおかあさんとアンナのふたりでこけももを摘んできて、赤い色に染めました。 それをガーネットのネックレスと引き換えに布地に織ってもらい、ティーポットでオーバーを縫ってもらいました。こうしてやっとすてきな赤いオーバーができあがり ました。
  その年のクリスマスイブ、アンナはオーバーを作ってくれた人たちみんなを招待しました。羊を育てているおひゃくしょうさん、糸紡ぎのおばあさん、はたやさん、仕立てやさん。みんなは、こんなすてきなクリスマスは久しぶりだと言い合いました。クリスマスの日には、アンナはオーバーを着て羊にお礼を言いに行きました。
  最後のページには赤いオーバーを着たアンナが立っています。体も大きくなり表情もちょっとおとなっぽく幸せそうに見えます。(もえぎ野web文庫 森田和子)

ゆきのひ
  冬の朝、ピーターが目を覚ますと窓の外には雪が積もっていました。ピーターは黒人の小さな男の子です。赤いマントを着て、外へ飛び出しました。まずは足あとを付け、足と棒ですじを付け、その棒で木に積もった雪を落とします。大きな子といっしょに雪合戦はできないけれど、雪だるま、天使のかたちを作ったり、雪山を滑り降りたりしました。 雪が降ったらやってみたいことを、ピーターは全部やってくれます。最後に雪だんごを作り、明日遊ぶために、ポケットに入れて家にもって帰りました。そしてお母さんに雪の中の冒険を話し、お風呂に入っても、楽しかったことをずっと思い出していました。ベッドに入る前にポケットをのぞくと・・・。。でも次の朝には、となりのともだちと一緒に出かけていきます。
  どのページを開いても、コラージュを使った美しい色と絵を楽しむことができます。ピーターの気持ちがそのまま伝わってくる絵本です。 おはなし会で読むと、子どもたちは絵本の世界でピーターと一緒に遊んでいるようで、それはそれはシーンとして身動きひとつしません。何ヶ月かたってから、「ピーターのいす」を読んだら、「この子、知ってる。」と言ってくれた女の子がいました。「ピーターのくちぶえ」、「ピーターのてがみ」、「ピーターのめがね」もあります。(もえぎ野web文庫 森田和子)

おふろだいすき
  ぼくは、いつもあひるのプッカをつれておふろにはいります。まず、プッカがおゆにはいると「ゆかげんはどうですか?プッカさん。」と、ぼくが聞きます。すると「あつくもなし、ぬるくもなし、ちょうどいいかげん。」とプッカが答えます。ぼくがタオルに石鹸を付けて体を洗っていると、おゆにもぐって遊んでいたプッカが浮いて来て、「おふろの底におおきなかめがいますよ。」と言いました。さあここから、かめ、ペンギン、おっとせい、かばと次々に出てきます。そして、きれい好きなかばは、耳の後ろや足の指まで忘れずに洗ってくれと頼んできます。ぼくは、かばを洗ってやり、自分の耳の後ろや足もついでに擦ります。洗い終わると、なんとくじらが現れてシャワーをかけてくれます。みんなの体の石鹸の泡が消えると、みんなでおゆにはいり、50まで数えます。おかあさんが顔を出し、「あったまった?あがってらっしゃい。」と言うと、プッカ以外の動物たちはおゆのなかに隠れてしまいそれっきり出てきませんでした。
個性豊かな動物たちとぼくとのやり取りはとても楽しく、あたたかな色調の絵がぴったりと合っています。おはなし会では、最後のページの「ぼくおふろだいすき。きみもおふろがすきですか?」に、にっこりしてうなずいてくれます。表裏表紙に描かれている湯気の中のひとつのシャボン玉も、こどもたちはちゃんと見つけて教えてくれます。
「あつくもなし、ぬるくもなし、ちょうどいいかげん。」は、こどもたちも大好きで、おふろにはいるたびに「ゆかげんはどうですか?」と言わされました。(もえぎ野web文庫 森田和子)

はなをくんくん

雪のふる野原では、のねずみが土の下で固まってねむっています。くまも巣穴のなかでねむっています。かたつむりは、からのなかでねむっています。りすは木のなかでねむっています。やまねずみは地面の下でねむっています。すると、のねずみが目をさまし、はなをくんくんさせます。次にはくまがねぼけまなこではなをくんくん、ちっちゃなかたつむりも、りすも、やまねずみもみんな、はなをくんくんさせておきだします。そして、みんな、はなをくんくんさせながら、かけていきます。やがて、みんなぴたりと止まります。それから笑って踊りだします。さあ、何を見つけたのでしょうか?
白黒で描かれた雪景色と、冬眠しているたくさんの動物たちのようすから、静かな静かな冬の世界が伝わってきます。一転、はなをくんくんさせて動きだした動物たちの表情や動きはかわいらしく、とてもいきいきしています。おはなし会で読むと、子どもたちは動物と一緒にかけてかけて、最後のページで は、本当ににっこりして「うわあい!」と喜んでいます。(もえぎ野web文庫 森田和子)

ぼく、だんごむし
   庭のすみや植木鉢を動かすとお目にかかる「だんごむし」。こどもがよくポケット に入れて、おみやげに持って帰ってくれました。ずっと昆虫だと思っていましたが、えびやかにの仲間だということを、この本で知り ました。
だんごむしの生活の様子がとてもわかりやすく描かれている絵本です。だんごむしの食べた枯れ葉の残骸とうんちのページは、芸術作品をみるようです。> だんごむしのうんちは四角だったのですね。だんごむしの天敵のありやかえる、とかげ、鳥は迫力があり、だんごむしの気持ちが分かるような気がします。どこに卵を産むか、どんな赤ちゃんが生まれるか、大人も十分楽しめます。枯れ葉や虫の死骸のほかに新聞紙や段ボールも食べるだんごむしは、脱皮した自分の抜け殻まで食べてしまいます。その上、あんな固いものまで食べるなんて、本当に驚きです。本を開いてみてください。
   おはなし会では、子どもたちはもちろん楽しみますが、お父さんお母さんの反応も面白い絵本です。(もえぎ野web文庫 森田和子)

どうながのプレッツェル
   5月のある朝、5ひきのダックスフントの子犬が産まれました。ポール、パトリシア、プリシラ、パーシバル、そしてプレッツェルです。5ひきは、見分けがつかないほどそっくりでした。けれども、9週間経つとプレッツェルの胴体が急に伸び始めました。そして、世界一胴長のダックスフントになりました。1歳になった時、ドッグショーで優勝しブルーリボンをもらいました。他の犬や見物の人たちはみんな感心して見てくれましたが、1ぴきだけ知らん顔をしている犬がいました。向かいの犬のグレタです。プレッツェルは、グレタのことが大好きで結婚したいと思っていました。けれども、グレタは笑うだけです。プレッツェルが、「どんなことでもするから、結婚して。」と、言うと、グレタは「証拠を見せて。」と、言います。そこから、プレッツェルは骨やボールをプレゼントし、体を使った芸当までしてみせますが、全くだめです。ところが、ある日グレタはボールで遊んでいて、工事現場の深い穴に落ちてしまいます。とても一人では脱出できません。そこへずっとグレタのことを見守っていたプレッツェルが助けに走ってきて・・・。グレタにどんなに冷たくされても、がんばるプレッツェル。「パン屋さんのプレッツェルのほうが好き」と、言われてもめげないプレッツェルを思わず応援してしまいます。
子どもたちも、この絵本の犬たちが大好きです。プレッツェルの思いが伝わり結婚する場面では、隣の友達と顔を見合わせてにっこりします。グレタが産んだ5ひきの子犬の色の違いもちゃんと見ていて、教えてくれます。最後に、表紙と裏表紙を広げて見せると、「すごーい。長ーい。」と、またびっくりします。(もえぎ野web文庫 森田和子)

ロバのシルベスターとまほうのこいし
  変わった形や色の石を集めることの好きなロバのシルベスターは、ある日、願ったことが叶う魔法の小石を手に入れます。どんなことを叶えようかと 心躍らせていた矢先、突然目の前に現れたライオンから逃れたい一心で、思わず「岩になりたい」と…。もう自ら石に触れて、魔法をかけることは できなくなりました。誰かが小石を拾って、もとのロバの姿に戻るように~と願ってくれるはずもなく、ただ季節はめぐっていきます。  一方、帰ってこない息子を探すとうさんとかあさんは深い悲しみに暮れています。
この場面は、読み聞かせをしながらも、親の立場として想像するだけで、 胸が苦しくなるほどの状況です。 さて、シルベスターに奇跡は起こるのでしょうか?
特別なことがなくても、大切な人と一緒にいられる幸せを感じられる心温まるストーリー、美しい色使いの絵とともに味わってみてください。(もえぎ野web文庫 野阪麻代)

かもさんおとおり

   かものマラードさんとマラードおくさんは、巣を作る場所を探していました。安全な場所を探して、ボストンの町まで飛んできました。そして公園の中の池に小さな島を見つけます。この池では人をいっぱい乗せたスワンボートが通ると、乗っている人たちがピーナッツを投げてくれるのです。おくさんは、これがすっかり気に入りここに住もうと思うのですが、走り回る自転車に危険を感じ、また飛び立ちます。チャールズ川の上を飛んでいた時小さな島を見つけ、そこへ下りると巣を作りました。ちょうどその時から、からだの羽が生え換わり始めます。 古い羽が抜けて新しい羽が生えそろうまで、泳ぐことはできますが飛ぶことはできません。川岸の公園まで泳いで行き、そこでマイケルさんというおまわりさんと出会いピーナッツをもらうと、毎日会いに行くようになりました。いよいよおくさんはたまごを八つ産んで温め始めます。ある日、たまごがわれて子どもたちが産まれました。名前は、ジャック、カック、ラック、マック、ナック、ウァック、パック、クァックです。さあ、子育てに忙しくなります。おくさんは、まず子どもたちに泳ぎ方ともぐりかたを教えます。その次に一列に並んで歩くこと、呼ばれたらすぐ来ることも教えます。それから自転車やスクーターなど、車の付いたものには危ないから近寄ってはいけないということも教えました。その間にマラードさんは、一週間後に公園で会う約束をして、川の様子を調べに出かけて行きました。そして、いよいよおくさんは子どもたちを連れて、マラードさんの待つ公園に向かいます。まず、おくさんを先頭に一列になって泳ぎ、岸に上がると、大通りに向かって歩き出します。大きな道路を横切ろうとしますが、自動車の警笛とかもたちの鳴き声でおおさわぎになってしまいます。するとそこへマイケルさんが駆けつけて・・・。かもの親子の一羽一羽のしぐさや表情のかわいらしさ、それを見守る町の人々の温かさが伝わってくる絵本です。
読み終わったら、最後のページの地図で親子の歩いた道を確かめることができます。おはなし会でこがもの名前を読んでいくと子どもたちもいっしょに声を出してくれます。(もえぎ野web文庫 森田和子)

しゅっぱつしんこう
   大きな駅の改札を抜けて、おかあさんとみよちゃんは、おじいさんの家へ向かいます。 まず、特急列車に乗り込みます。ホームにはお弁当屋さんが立っています。たくさんの荷物を持った人たちが、列車に乗り込もうとしています。駅員さんは、時計を見ています。 さあ、しゅっぱつしんこう!特急列車は、ぐんぐんスピードを上げ、山のふもとの駅に向かいます。ここで、急行列車に乗り換えです。 しゅっぱつしんこう!急行列車は山を登り、山の中の駅に着きます。今度は、普通列車に乗り換えます。しゅっぱつしんこう!普通列車は、山の奥へ奥へゆっくり走って行きます。暗いトンネルをぬけると、山の奥の小さい駅に着きました。駅には、おじいさんがお迎えに来ていました。どんどん変わる景色、ぎらぎら照りつける太陽と、夏休みを楽しみにしているこの 時期にぴったりの絵本です。
おはなし会で読むと、みんなで「しゅっぱつしんこう!」と元気に声を出してくれます。どのページの中でも、おかあさんとみよちゃんをさがして、「あっ!あそこにい る。」と言ってお友達と顔を見合わせて、にっこりする子がいます。電車の好きな子は、途中で出会う新幹線や電気機関車に声を上げます。最後に表紙と裏表紙を広げて見せると、特急、急行、普通列車が並びます。これに、「かっこいい!」と大喜びです。(もえぎ野web文庫 森田和子)

めっきらもっきら どおんどん
   入道雲がもくもくと林の向こうに見える道を、かんたは、遊ぶ友達を探して歩いてい ます。とうとう神社の境内までやってきたかんたは、大きな木の下でめちゃくちゃのうたを 大声で歌います。
ちんぷく まんぷく
あっぺらこの きんぴらこ
じょんがら ぴこたこ
めっきらもっきら どおんどん
すると、風が吹き、大きな木の根元の穴の中から、みょうな声が聞こえてきました。
かんたがその穴を覗き込んだとたん、その穴に吸い込まれてしまいます。着いたところは夜の山でした。そこでかんたは、 おかしな3人に飛びつかれていっしょに遊ぼうとせがまれます。この3人、かんたがいやだと言えば大声で泣き出し、遊んでやると言えば、順番をめぐってけんかを始めてしまいます。かんたは、じゃんけんで順番を決めさせ、それぞれと遊んでから、みんなで遊びます。おなかがすくと、おもちのなる木をみつけておなかがいっぱいになるまで食べます。すると3人は眠ってしまいます。かんたは1人で月を見ているうちに、たまらなく心細くなってきました。そしておもわずある言葉を叫びます。するとかんたは神社に戻っていました。さあ、かんたはなんと叫んだのでしょうか?
おはなし会では、子どもたちは言葉をとても楽しみます。かんたの歌う歌は、すぐに覚えて何度も声に出しています。夜の山で出会う3人の名前も「もんもんびゃっこ」「しっかかもっかか」「おたからまんちん」とすぐに言ってくれます。この3人が名前とぴったりに描かれていて、遊んでいる様子は本当に楽しそうです。子どもたちも一緒に遊んでいるような表情で聞いています。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

エマおばあちゃん


   エマおばあちゃんは、1人で暮らしています。子どもが4人、孫が7人、ひ孫が14人 います。みんなが遊びに来るのを楽しみにしていましたが、いつもゆっくりする暇も なく帰ってしまいます。エマおばあちゃんの話相手は、しましまねこの<かぼちゃの たね>しかいませんでした。エマおばあちゃんの好きなのは、戸口に吹き寄せられた 雪を見たり、のんびりとくつろいで、遠い遠いふるさとのちいさな村を夢見たりする ことでした。
 エマおばあちゃんの72歳の誕生日に、みんなはふるさとのちいさな村の絵をプレゼ ントします。おばあちゃんは、この絵を壁にかけて、みんなにお礼を言いました。 でも、心の中では、「あたしが覚えている村とはちがうわ。」と、思っていまし た。毎日、絵を見るたびに、おでこにしわを寄せました。しわは、日ごとに深くなっ ていきました。
 ある日、とうとう、エマおばあちゃんは決心し、絵の具と筆とイーゼルを買いまし た。そして、おばあちゃんが覚えているとおりのふるさとの村の絵を描き始めまし た。絵が出来上がると、みんなからもらった絵を外し、そこに自分の描いた絵をかけ ました。そして、にっこりしました。でも、みんなが来るときは、もらった絵にかけ かえ、帰るとすぐに自分の絵と取り換えました。
 ところが、ある日、うっかり絵を取り換えるのを忘れていました。この絵が、おば あちゃんが描いた絵だとわかるとみんなびっくりしました。そして、「いい絵だわ! もっと描けばいいのに」と、いいました。その日から、おばあちゃんは毎日、絵を描 き続けました。家の中は、おばあちゃんが描いた絵で埋め尽くされました。  エマおばあちゃんは、楽しく、大切な時間を自分で見つけました。もう、さびしく ありません。どのページも明るい色彩で描かれていて、エマおばあちゃんの温かさが伝わってく る絵本です。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

おおきなおいも


秋、おいしいものがたくさん実ります。おいもも、とってもおいしいですよね。 あおぞら幼稚園は、明日、おいもほり遠足です。
朝になると、雨降りで遠足は一週間後になってしまいました。子どもたちは、「つま んない。つまんない。」と大騒ぎ。でも、先生から「おいもはね、ひとつ寝るとむくっと大きくなって。ふたつ寝るとむ くっむくっとおおきくなって・・・ななつ寝るといっぱい大きくなってまっててくれ るよ。」と、聞くとこどもたちは、次々と紙をつなげて、大きなおいもを描きます。 さあ、このおいも、みんなで掘り出したら、どうやって運べばいいでしょう。いろい ろな意見が出てきますが、なんとヘリコプター2機を使って幼稚園まで運びます。そ れからきれいに洗って、プールにうかべたり、きょうりゅうにしたりして遊びます。 そして、おなかがすいた子どもたちは、おいもを料理しておいもパーティです。その 後、なんと宇宙旅行にまででかけます。
この絵本は、子どもたちと一緒に楽しめる絵本です。お家でおいもパーティをした くなります。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

もりのなか
ぼくが、紙の帽子をかぶり、あたらしいラッパを持って、森へ散歩に行くと、昼寝をしているライオンに出会います。ライオンは目を覚ますと、「ちゃんと髪をとかしたら、僕もついて行っていいかい?」と言って、ぼくの散歩についてきます。その後に、ぞうの子ども、大きな茶色のくま、カンガルーの親子、こうのとり、さると順々についてきます。最後にうさぎもついてきます。
そして、みんなでピクニックをしたり、ハンカチ落としやロンド橋落ちたで遊びます。それから、かくれんぼをしたら、ぼくがおにになります。「もういいかい!」と言って、目をあけると、動物たちは一匹もいなくなっていて、お父さんがぼくをさがしにきていました。そしてぼくは、お父さんの肩車で家へ帰ります。
白黒の地味な絵本ですが、子どもは大好きです。みんなすーっとこの絵本の世界へ入ってきます。そして、空想の世界をたっぷり楽しみます。おはなし会で、小さな子から中学生までしーんと静まる時、読み手は鳥肌が立ちます。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

くんちゃんのだいりょこう
冬ごもりにはいる前のある日、こぐまのくんちゃんは、お父さんお母さんと散歩に 出かけます。散歩の途中で、くんちゃんは南の国へ渡って行く鳥に会います。自分も 南の国へ渡って行きたいと言いますが、お母さんに「冬は、くまは眠るのです。」 と、言われてしまいます。でも、お父さんは「やらせてみなさい。」と、いってくれ ます。
 さあ、喜んだくんちゃんは丘を登って行きますが、丘のてっぺんまで来るとお母さ んにさよならのキスをしてくるのを忘れたことに気がついて、戻ってきます。丘の上 へ登って行くたびに、双眼鏡、つりざお、むぎわらぼうし、水筒などの必要なものを 思い出しては、家まで戻ってきます。こううしているうちに、くんちゃんはすっかりくたびれてしまい、ついに・・・
丘を登って行っては戻ってくるくんちゃんの様子に、子どもたちは、「またー。」 と、言いながら繰り返しを楽しみます。くんちゃんを見守るお父さんお母さんの温か さに、みんなうれしそうな顔を見せてくれます。
くんちゃんを主人公にした絵本は、「くんちゃんとふゆのパーティ」「くんちゃんの はじめてのがっこう」「くんちゃんのはたけしごと」「くんちゃんのもりのきゃん ぷ」「くんちゃんはおおいそがし」「くんちゃんとにじ」があります。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

十二支のはじまり
むかし、ある年の暮れ、神様は動物たちにおふれをだします。
「正月の朝、御殿に来るように。来たものから、十二番まで、順番に一年ずつ、その年のたいしょうにする。」
それを聞くと、動物たちは大騒ぎになります。ねこはねずみに「神様のところへ行くのは、いつだったっけ?」と聞くと、ねずみはわざと一日遅らせて教えます。うしは、自分は遅いからと前の晩から準備を始めます。そこでねずみはうしの背中に飛び乗ります。ほかの動物たちも、それぞれ御殿めざして出かけて行きます。でも、お互いにぶつかったり、つまずいて転んだり・・・。そこをすり抜けて、十二匹の動物たちが御殿に入ったところで、門は閉まります。うその日を教えられたねこは、どうなったでしょう。
年の初めには、必ず「今年の干支は」という言葉を聞きます。「干支」って、何?「どうしてこの動物なの?」というこどもの疑問に、とてもわかりやすく答えてくれる絵本です。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

ふゆめがっしょうだん

表紙には、たくさんの木の芽の写真が並んでいます。そして、それぞれが顔に見えるのです。この顔に見えるところは、実は、落葉した葉がついていた跡です。その中に、目や口のようなもようがありますが、これは葉に養分を送っていた管の断面です。この顔の上にある、円形や円錐形をした部分、これが冬芽で、これから葉や花になるものが中に小さく畳まれていて、春をまっています。一ページに拡大された木の芽がひとつづつ、まっすぐこちらを見つめています。それは、うさぎさんやコアラ君の顔があったり、帽子をかぶったこどもの顔に似ていたりと、どの顔も楽しそうです。そこに、長さんの詩がぴったり合っています。
最後のページには、それぞれの木の名前が書いてあります。夏にはあんなにたくさんの葉が茂っていたのに、今はすべて葉を落としてしまっている木々も、近づいて見るとこんなものを見ることができるのですね。北風に負けずに公園や雑木林を歩いて見たくなります。おはなし会では、子どもたちは何の顔に見えるか、それぞれ声に出して言ってくれます。
                                                              (もえぎ野web文庫 森田和子)

ともだち

ともだちって、どんな人かな?
「ともだちって」、「ともだちなら」、「ひとりでは」、「どんなきもちかな」、「けんか」、「ともだちはともだち」、「あったことがなくっても」、それぞれにいくつかの場面があり、見開き1ページに1つの文章とぴったりの絵が描かれています。
だれだって ひとりぼっちでは いきてゆけない。ともだちって すばらしい。そして、最後のページの言葉へとつながっていきます。1ページ1ページ、ゆっくり読ん でほしい絵本です。
おはなし会で読むと、となりの子と顔を見合わせて、にっこりしています。「とし が ちがっても ともだちは ともだち」の場面では、みんな声を出して笑います。身近なともだちから、遠いところで困っているともだちのことまで考えてしまいます。自分では絵本を手に取らなくなった高学年の子にこそ、出会ってほしい本です。

                                                              (もえぎ野web文庫 森田和子)

いっぱい やさいさん

   きゅうりさん、たまねぎさん、らでぃっしゅさん、とうもろこしさん、ほうれんそ うさん、じゃがいもさん、ぐりんぴーすさん、にんじんさん、なすびさん、ぴーまん さんに、やさしく語りかける言葉と、みずみずしい野菜の絵が見開きいっぱいに描か れています。その野菜のそばには、かわいらしい虫がいます。
おはなし会では、表紙のトマトと並ぶてんとうむしとありをすぐに見つけて、大喜 びです。たくさんの野菜が並んだページのたくさんの虫も大きな声で教えてくれま す。一番後ろにいる子もちゃんとみつけてくれます。こどもは本当によく見ているな と、感心します。最後に、野菜のそばにいる虫の名前が書いてあるので、もう一度最 初から野菜と虫を確認して楽しむことができます。
 「この地球上にはさまざまな生き物が生かされています。この数かぎりない生き物 の中のどの一つとして、自分が自分として生かされていることを幸せに思わぬものは いません。みんな幸せに思い、嬉々として他者とは違う自分の個性を発揮しあって生 きています。」と、まどさんは、書いています。その思いがしっかり伝わってくる一 冊です。

                                                              (もえぎ野web文庫 森田和子)

ニひきのこぐま

   冬の間に穴の中で生まれた二ひきのこぐまは、春になって、おかあさんといっしょに外へ出てきます。ある日、おかあさんははちみつをとりに出かけて行き、二ひきはお留守番をすることになりました。外はとても楽しくて、遊んでいるうちどんどん遠くへ行ってしまい、家への道が分からなくなってしまいます。牧場の子牛や馬に聞いても、おかあさんのところへ帰る道はわかりません。からすには、おこごとをもらってしまいます。くたくたになったこぐまは、とうとう草の上に寝転んで眠ってしまいます。
でも、ちゃんとおかあさんが迎えに来てくれました。あのこわかったからすが、おかあさんを連れて来てくれたのです。
この絵本は、白黒写真の絵本です。こぐまの表情やしぐさは本当にかわいらしく、おはなしとぴったり合っていて、どうしたらこんな写真が撮れるのかしらと思ってしまいます。
おはなし会では、子どもたちはこぐまになりきって聞いています。迷子になってしまうと不安そうに、からすに叱られると首をすくめています。おかあさんが来てくれた時には、ほっとした表情を見せてくれます。                (もえぎ野web文庫 森田和子)

かさ さしてあげるね

   赤い長靴をはいて、かさをもった子どもが歩いています。 すると、ぞうさん、きりんさん、ありさん、くまさんに出会います。そして、それぞれの背中に、「ピッチャン パッチャン ピッチャン パッチャン」「ピロリン ポロリン ピロリン ポロリン」「ピピ ポポ ピピ ポポ」「シッポ シャッポ シッポ シャッポ」と、雨がふります。そこで、その子は、それぞれに合った大きさや形のかさをさしてあげます。くまさんには抱っこしてもらって、雨の日の散歩をします。最後には、お日様が顔を出し、みんなもかさから出てきます。「ポツポツ」「シトシト」「ザーザー」とは違った雨の音が、なんともゆかいな絵本です。音に合わせて描かれている、雨の線も楽しめます。
おはなし会では、赤ちゃんもにこにこして聞いています。言葉が出るようになった子は、一緒に声を出してくれます。雨のふる日には、かさをさしてお散歩に出かけたくなってきます。                                  (もえぎ野web文庫 森田和子)

ひとまねこざるときいろいぼうし

   さるのジョージはアフリカのジャングルに住んでいます。ジョージは、とても知りたがり屋で、ひとまねが大好きでした。
ある日ジョージは、おおきなきいろいぼうしをかぶったおじさんをみかけましたおじさんがぼうしを脱いで地面に置くと、ジョージはめずらしくてたまらず、かぶってみます。すると、おじさんはジョージを捕まえてしまいます。そして、ジョージは、おじさんに連れられ海をわたり、大きな町の動物園に行くことになります。船に乗ってからも、かもめのまねをして海に落ちたり、おじさんの家では、消防署に電話をかけて大騒ぎを起こし捕まえられてしまいます。牢屋に入れられてしまったジョージですが、うまく逃げだしてまたまた事件を起こしますが、おじさんがジョージを見つけて無事に動物園に連れて行ってくれます。
ジョージのかわいらしい表情や活躍が本当に楽しい絵本です。子供たちにとっては、アニメでおなじみのおさるのジョージです。おはなし会では、「知ってるー!」の声が上がります。でも、「ジョージは、アフリカにすんでいました。」と読むと、「へー!そうなんだ!」、そしてどんどん、絵本の中に入ってきます。最後におじさんが風船売りにお金を払うとほっとした顔をします。みんな心配していたんだね。「ひとまねこざる」、「じてんしゃにのるひとまねこざる」、「ろけっとこざる」、「たこをあげるひとまねこざる」、「ひとまねこざるびょういんへいく」も一緒に楽しみましょう。
                                                              (もえぎ野web文庫 森田和子)

おやすみみみずく
   一本の木の洞にみみずくがいます。ページをめくると、はちがぶんぶんはねならし ます。次には、りすがきのみをかりかりかじります。続いて、からすがかーかーかーとなきます。さらに、きつつき、むくどり、かけす、かっこう、こまどり、すずめ、はとがなきだします。そのたびに、みみずくは、「あーねむたい。」
やっと暗くなって月がでると、みんなは眠りあたりはひっそりしずまりかえります。そこでみみずくが「ぶっきょっこー」となきます。こんどは、もりのとりたちが「あーねむたい!」
絵本の真ん中にある一本の木とみみずく、そしてこの木に集まってくる鳥たちが、鮮やかな色彩で描かれています。それぞれの鳴き声もとてもリズミカルに楽しく表現されています。森の中で、鳥たちの声を聞いてみたくなります。
お話会では、子どもたちは「あーねむたい。」を、声をそろえて一緒に言って楽しみます。お気に入りの鳥の鳴き声を何度もまねる子もいます。

                                                       (もえぎ野web文庫 森田和子)

いたずらきぁんしゃちゅうちゅう

   あるところに、ちゅうちゅうという小さな機関車がありました。 ちゅうちゅうは真っ黒くて、ぴかぴか光っていて、きれいなかわいいきかんしゃです。 ちゅうちゅうを動かすのは、機関士のジムと機関助士のオーリーです。ちゅうちゅうの引っぱる客車には、アーチボールドという車掌さんが乗っています。この三人は、ちゅうちゅうをかわいがり、大変よく世話をしてやっていました。ちゅうちゅうは、毎日客車と貨車を引いて小さな町の小さな駅から、大きな町の大きな駅まで行ったり来たりしていました。
ある日、ちゅうちゅうは考えます。「重い客車や貨車なんか引くのはもうごめんだ。私ひとりなら、もっと速く走れるんだ。そうしたら、きっとみんなは私を眺めて、なんてきれいなすてきな機関車だろうというだろう。」 次の日、ジムとオーリーとアーチボールドがコーヒー店で休んでいた時、ちゅうちゅうは、たった一人で線路の上に立っていました。「さあ、今だ!」とちゅうちゅうは走り出します。さあ、ちゅうちゅうはどうなるのでしょうか? 白黒で描かれたちゅうちゅうは、絵本からとびだしてきそうなスピードと迫力があります。かなりボリュームのある絵本ですが、小さな子もしっかりお話の中に入ってきます。読み手が疲れても、もう一回と必ず言われてしまいます。(もえぎ野web文庫 森田和子)

時計つくりのジョニー    あるところに、手先が器用で物を作るのが上手な、ジョニーという男の子がいました。
ジョニーのお気に入りの本は、「船のもけいのつくりかた」、「テーブルといすのつくりかた」、「大時計のつくりかた」の三冊です。中でも一番のお気に入りは、「大時計のつくりかた」でした。
ある日のこと、「僕も大時計を作ろう。」と、思いつきます。でも、お父さんとお母さんは、「そんなつまらないことを言わないで、お手伝いをしなさい。」と、言います。学校の先生には、「まだ小さいんだから、そんな難しいことはできません。」と、言われてしまい、友達には、ばかにされ、いじめられてしまいます。でも一人だけ、「ジョニーならできるわ。」と、言ってくれたのは、スザンナでした。さっそく、ジョニーは時計を作り始めますが、様々な困難が待ち受けています。ジョニーはひとつひとつ解決して、もう一人の理解者鍛冶屋のジョーの協力も得て、立派な大時計を完成させます。
自分の好きなことに前向きに取り組み、目標を達成するジョニーの姿に心が熱くなります。
おはなし会では、理解のないおとなや、それに同調するいじっめっこ、きっとこういう場面に出会ったことがあるのでしょう、静かに静かに聞いています。ジョニーが完成させた大時計が、しっかり時を刻み、お父さんお母さんが、お披露目のお茶会の場面では、みんなうれしそうです。あんなに迷惑そうにしていたお父さんが、ジョニーにたくさんの道具をプレゼントしてくれます。木を切る道具、金属を切る道具という場面では、「おー」という声が上がりました。「ジョニー・ジョー・スザンナ商会鉄工ならびに時計製造業」の看板にみんなの目はキラキラします。好きなことが仕事に結びつくなんて、本当になんて素敵なのでしょう。(もえぎ野web文庫 森田和子)

木はいいなあ    木と人や動物が、どのページにもいきいきと描かれています。白黒と色のあるページが交互になっているので、美しい絵の色がとても印象に残ります。
空が見えないほど茂った木の迫力、太陽に照らされた緑の木々の色、紅葉した木と落ち葉で遊ぶ子どもたちの様子は、ずっと見ていたいと思ってしまいます。落ち葉に寝転んだり、踏んで歩く楽しさ、今ではなかなか難しいたき火のにおいまでよみがえってくるようです。
おはなし会では、やっぱり子どもたちが木に登っているページに声が上がります。枝に登って遠くを見ている子、枝に座って考え事をしている子、海賊ごっこをしている子と、読んでいくと、「あ、あそこにいる。」と、教えてくれます。りんごの木に登ってりんごをとって食べているページでは、「おいしそうだね。」と、ちょっとうらやましそうです。小さい子から大きい子まで、それぞれに楽しむことができる絵本です。都市化がすすむにつれ、子どもと自然との生活が失われていくのを嘆き、作者自身が幼い日に経験した木とのすばらしい生活を、子どもたちにも味わってほしいという願いを込めて作られた絵本です。(もえぎ野web文庫 森田和子)

天使のクリスマス
この絵本は、文字が一つもありません。140の絵でおはなしが進んでいきます。
静かな雪の降るクリスマス・イブの晩です。女の子はベッドの上に靴下とサンタクロースへの手紙を置いて眠ります。すると、カーテンの陰から一人の天使が現れて、手紙を読むときちんとたたみ、帯に挟みます。それから、クリスマスツリーのろうそくに火をともし、そのろうそくを道に並べて、サンタクロースを導き、ちゃんと手紙を届けます。
サンタクロースは、手紙に書かれたプレゼントをそりから袋に詰めて、女の子に届けに行きます。天使は、プレゼントを間違えないようチェックし、女の子のベッドまで連れていき、サンタクロースがプレゼントを落とした音で目を覚ましてしまった女の子を眠らせたりと、忙しく働きます。
朝になると、天使は女の子を起こし、プレゼントをもらった女の子の喜ぶ様子を確認して、自分の家へ帰ります。見事に仕事を終えた天使が暖炉の前でお茶を飲みくつろぐ姿は、幸せな満足感に満ちています。煙突のない家の子には、こうしてプレゼントが届くのですね。
どうぞ、お子さんと一緒にゆっくりとページをめくってください。
                                                                    (もえぎ野web文庫 森田和子)

おしょうがつさん
表紙をめくると、まず、お雑煮が真ん中に描かれています。一枚めくるたびに、「かどまつ」「おそなえ」「おせち」「おとしだま」「ふくわらい」「はねつき」「こま」「たこ」「こたつ」「みかん」「こよみ」とお正月に関するものが出てきます。右のページいっぱいに描かれた絵と左のページの谷川俊太郎さんの言葉がぴったりあった楽しい絵本です。
おはなし会では、子供たちは大きな声で絵に描かれているものを答えてくれますが、「ふくわらい」「はねつき」だけは、きょとんとしていました。今はなかなか目にすることがなくなったのでしょうか。昔ながらのお正月の遊びも、お友達とやってみてね。「おせち」「こたつ」も、おじいちゃん家、おばあちゃん家でということでした。最後に表表紙と裏表紙を広げると「かるた」の絵札がならんでいます。この「かるた」が、いぬぼうかるたです。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒にこの絵本で遊んでみませんか。
「まつが まってる おきゃくさま
どこから くるのか おしょうがつさん」
                                                         (もえぎ野web文庫 森田和子)

きらきら
大きな雪の結晶の写真が、表紙いっぱいにきらきら輝いています。ページをめくると、いろいろな形の雪の結晶が目に飛び込んできます。そこに、谷川さんの言葉が並びます。青い地に白い文字と結晶の写真のこの絵本は、飾っておきたいくらいです。
この季節のおはなし会に使うと、子どもたちの目も「きらきら」してきます。「お正月におじいちゃんおばあちゃんの家に行ったときに雪が降っていたよ。」「スキーに行ったよ。」「雪祭りに行くんだよ。」などと、雪を見たときの話をしてくれます。
小学生は、谷川さんの言葉に反応して、「そうか、かみさまのおくりものなのか」とつぶやいたりします。
自然の形の美しさ、不思議さ、そしてここだけ黒い文字で「しずかにつもっていると やさしいけれど なだれになるとおそろしい」と厳しさも、伝えています。
                                                       (もえぎ野web文庫 森田和子)


からすたろう

村の小学校に一人の男の子が入学します。この子はとても小さかったので、みんなから「ちび」と呼ばれるようになりました。ちびは、学校ではいつもひとりぼっちでしたが、雨や嵐のときも休まずに学校へ通いました。
ちびが六年生になったとき、いそべ先生が担任になります。先生はちびの色々な才能を見つけ出します。 そして、ちびを学芸会の舞台に立たせます。そこでちびは、「烏のなきごえ」を披露します。そのさまざまな鳴き声は、皆の心ををちびが毎日通ってくる遠い山の方へ連れていきました。 卒業式の日、ちびは、クラスで一人だけ皆勤賞をもらいます。それからは、みんなはもう「ちび」ではなく、「からすたろう」と呼ぶようになります。
この絵本は、1995年にアメリカで出版されました。戦前の日本の小学校が描かれていますが、今の子ども達もよく聞きます。六年生の三学期に読むようにしていますが、教室の中がしーんとして、その集中に鳥肌が立ちます。みんながそれぞれの六年間を思い出しているようです。(もえぎ野web文庫 森田和子)

たんぽぽ

春になるといろいろなところに、たんぽぽは咲いています。冬の間は、葉を低く地 面に広げていたたんぽぽは、暖かくなると新しい葉を出して立ち上がります。そし て、晴れた日につぼみが開き始めて花が咲きます。花は晴れた昼間咲き、夕方日が陰 るころには閉じてしまいます。雨や曇りの日には咲きません。
花が終わると、実が熟すまで茎は低く倒れています。実が熟すと茎は起き上がり高 く伸びます。綿毛は晴れた日に開き、風に乗って飛んでゆきます。風に運ばれた実は 土に落ちて、やがて根を出します。
たんぽぽの一年間の様子がとてもリアルに描かれています。おはなし会では、4ページにわたる根の絵には、子どもたちもびっくりです。一日目の花と二日目の花の違い、一本の花を作っている小さな花の構造、種をしっかりと遠くへ飛ばす仕組みなどに納得の表情を見せてくれます。
道端で、たんぽぽを見つけたら、ゆっくりと観察してみたくなる絵本です。
                                               (もえぎ野web文庫 森田和子)

くいしんぼうのはなこさん

あるお百姓の所に、子牛が生まれます。名前は「はなこ」です。
このはなこは、とてもわがままでした。食べ物も「あれはいや、これはいや。」と言って、ごちそうばかり食べていました。そのおかげで、はなこの体は、大きくなりピカピカと光っていました。
 さて、春になると、はなこは山の牧場へ連れていかれます。この牧場には、ほかの家からもたくさんの子牛がやってきました。牧場はまるで子牛の学校のようでした。
お百姓たちが帰ってしまうと、子牛たちは山の牧場の女王を決めるチャンバラを始めます。そして、ごちそうばかり食べていたはなこが勝ちます。負けた子牛たちは、いつもはなこの後をついて歩いて、よく言うことを聞くと約束しました。それからは、はなこはいばり放題です。池に水浴びに行っても、はなこが一番ですし、大きな涼しい木陰の真ん中をはなこは独り占めです。
 ある日一人のお百姓が、おいもとかぼちゃをどっさり持ってきてくれました。そこではなこは、これを独り占めです。するとどうでしょう、はなこのおなかはアドバルーンのようにふくらんでしまいます。さあ大変です。はなこは苦しくて、おなかも破裂しそうです。ほかの子牛たちも大さわぎです。そして、はなこは…
 緑の牧場、つやつやしたはなこさんのからだ、おいしそうなおいもやかぼちゃなど、色のとてもきれいな絵本です。
幼稚園や小学校が始まって一か月、クラスもなんとなく落ち着いてきたころ、この絵本を持って行きます。子どもたちは、とても良く聞きます。共感するところがあるのでしょう。
                                                                     (もえぎ野web文庫 森田和子)



川はながれる
寒い北国、その山奥で雪がとけ、氷がとけて、ちいさい川がうまれました。だんだんおおきくなって、元気いっぱい流れ始めます。「どこへいけばいいんだろう。」シカは、「ここにいれば。」とすすめてくれますが、「だめだめ、川はどこかへ向かって流れていくものなんだ。でも、それがどこだかわからない。」
川は、出合った動物たちの意見を聞きながら、岩の間を通り過ぎ広い平野に流れていきました。さらに湖に流れ込み、町の中を通り、野原を流れ、そして、やっと海にたどり着きます。
海に着いた川は、とても大事なことに気づきます。川のまわりに描かれている木々や草、動物、鳥、魚に昆虫がとてもいきいきとしています。優しい色使いの絵は、いつまでも眺めていたいくらいです。
夏を前に1ページ1ページ、ゆっくりと親子で楽しんでみてください。
                                               (もえぎ野web文庫 森田和子)

かさ

赤いかさをさした女の子が、黒い大きなかさを持って歩いています。
公園の横を通り過ぎ、池の横を通ると、おともだちはお母さんと一緒に歩いてきました。おともだちに手を振って別れると、ケーキ屋さんやおもちゃ屋さんをのぞきながら、大きな交差点までやってきました。横断歩道を渡ると駅に着きます。そこでは、お父さんが待っていました。お父さんにかさを渡して、一緒に帰ります。途中のケーキ屋さんで、お父さんはケーキを買いました。女の子はケーキを持って、おとうさんのかさに入って帰ります。
かさを持っていかなかったお父さんに、かさを届けるという大事な仕事を、しっかりとやりとげる女の子の物語です。女の子が、お父さんと会った時の笑顔は、本当にうれしそうです。それまでの緊張が一気に解けたのですね。
文字は一切ありませんが、白黒の絵に一色だけ使われている赤い女の子のかさがとても印象に残ります。現在、こどもをひとりでお迎えに行かせることは、残念ながら難しい社会になっています。
絵本の中で、ちょっと体験してみませんか?   (もえぎ野web文庫 森田和子)

はじめてのキャンプ
なほちゃんは、ちっちゃいおんなのこです。
このなほちゃん、隣のともこおばさんと大きい子たちのキャンプに「私も行く!」と 宣言します。
大きい子たちは、当然、反対します。まず、ちっちゃい子は、重い荷物を持てない し、すぐ泣くし、ご飯を炊くまきを集められない。それに、夜、暗いと怖がるから、 だーめ!
そこで、なほちゃんは、「重い荷物持って歩けるし、絶対泣かない!ご飯を炊くま きだって集められるし、暗くなっても怖がらない!」と、叫びます。
するとおばさんから、「暗い外に、ひとりでおしっこにいける?」との問いかけが、 なほちゃんは、「わたし、暗い外にひとりでおしっこにいける!」とこたえます。 おばさんは、「なほちゃんもつれていきますよ。」と、言ってくれます。
さあ、いよいよキャンプに出発です。重い荷物を持ってがんばって歩きましたし、 川で転んでも泣きませんでした。特大のまきも見つけました。おいしいご飯を食べて、キャンプファイアと楽しい時間を過ごします。
火が消えると、あたりは真っ暗になりました。さあ、ここから、なほちゃんのドキドキ体験が始まります。
おはなし会では、みんななほちゃんになりきって、ハラハラドキドキ楽しんでいます。
家族から離れて一人で参加するはじめてのキャンプ、期待と不安でいっぱいです。で も、帰ってきた時の晴れやかな顔は、確かな成長を感じさせてくれます。
夏休みに、ぜひ手に取ってみてください。   (もえぎ野web文庫 森田和子)

ルピナスさん
アリスという名前の女の子が、海辺の町に住んでいました。アリスのおじいさん は、ずっと前に大きな船で、アメリカへわたってきた人でした。
夜になると、おじいさんは遠い国々の話をしてくれました。お話しが終わるとアリス は、「大きくなったら、私も遠い国に行く。そして、おばあさんになったら、 海のそばに住むことにする。」と、言いました。それを聞いておじいさんは、「それ は結構だが、もうひとつしなくてはならないことがある。」と、言います。
それは、「世の中を美しくするために、何かをしてもらいたい。」ということでし た。アリスは、何をどうすればいいのかはわかりませんでしたが、「いいわ。」と約束します。
アリスは、おとなになると、潮の匂いのしない町に行って働きます。それから、遠 くのたくさんの国々を見て回りました。そして、海のそばに、暮らす場所を見つけ、世の中を美しくするためには、なにをすればいいのかを考えます。やがて、そこで「ルピナスさん」と呼ばれるようになります。
ひとりの女性の生き方を、板に水彩絵の具で描き、色鉛筆でアクセントをつけると いう独特な画法で、描いた絵本です。咲き誇るルピナスの優しい色が、心を落ち着か せてくれます。
また、生きるということを改めて考えさせてくれる一冊です。
「ルピナスさんは小さなおばあさんですが、昔からおばあさんだったわけではあり ません。」と、あるように、みんなのおばあさんやおじいさんにもたくさんの物語が あることと思います。ちょっと教えてもらいませんか?    (もえぎ野web文庫 森田和子)



ぐりとぐら
お料理することと食べることが大好きなのねずみのぐりとぐらは、森の中で大きな卵を見つけました。この卵で何を作ろうかと二人は考えます。
そして、かすてらをつくることにきめました。卵は大きすぎて運べません。そこで二人は家へ帰ると、用意をします。いちばんおおきなおなべ、小麦粉、バター、牛乳、お砂糖、ボールと泡立て器、エプロンを二枚、マッチ、リュックサック。卵の所に着くと、さっそくかすてらをつくります。
かすてらの焼けるのを待っていると、森の動物たちが集まってきました。あれあれ、その中には「いやいやえん」に出てきたあの子たちもいます。
おなべのふたをとると、なんともおいしそうなかすてらが出てきます。みんなでおいしく食べている様子に、一緒に食べたくなります。
みんなが大好きで何度も読んでもらっている「ぐりとぐら」だけど、おはなし会で、みんなで聞くのも楽しいです。
「ぼくらのなまえは ぐりとぐら このよでいちばんすきなのは おりょうりすること たべること ぐり ぐら ぐり ぐら」みんなで声を出してくれます。
いつでも楽しめる絵本ですが、どんぐりやくりを拾ったり、キノコが生えていたりというこの季節にゆっくりとページをめくってみませんか?   (もえぎ野web文庫 森田和子)

サリーのこけももつみ
サリーとお母さんは、こけももやまへこけももを摘みに行きます。冬に食べるジャムを作るためです。
山の反対側には、くまの親子が冬に備えてこけももを食べにきています。
サリーは、こけももを摘んでは小さいバケツに入れます。
すると、「ポリン・ポロン・ポルン!」という音がします。でも、サリーはバケツに入れたこけももを食べてしまいます。お母さんは、こけももを摘んではバケツに入れ、登って行きます。サリーも、こけももを食べながらお母さんの後を追いかけます。
夢中で食べているうちに、山の反対側から登って来ていたくまの親子と入れ替わってしまいます。サリーはくまのお母さんの後をついて行き、 くまの子は、サリーのお母さんのバケツからこけももを食べています。くまのお母さん、サリーのお母さんの大人の対応で、本当の親子にもどり、無事に山を下ります  紺色だけで描かれたこけももやま、サリー親子とくまの親子の表情がとてもすてきな絵本です。
おはなし会では、お母さんを取り違えていることにすぐに気づいて、子どもたちは、心配そうな表情を見せます。お母さんと 離れてしまうことは一大事、みんなサリーになってドキドキです。きっとこんな体験をしたことがありますよね。
55ページのボリュームある絵本ですが、最後まで集中して聞いています。自分たちで摘んだこけももでジャムを作るなんて、楽しいですね。見返しに描かれた台所の様子が、とてもすてきです。
                                                         (もえぎ野web文庫 森田和子)


クリスマス人形のねがい

クリスマスイブの朝です。小さな田舎町にあるブロッサムさんのおもちゃ屋さんのおもちゃたちは、「今日中に買ってもらおう。」と、話し合っていました。その中に、昨日箱から出されたばかりの、ホリーという名のお人形がいました。赤いドレスと靴、ペチコートと靴下は緑のクリスマスカラーです。おもちゃたちは、こどもたちのやわらかい手で触られ、あたたかいうちに連れていってもらえるのを待っていました。ホリーも、連れていってもらえるようにと、願っていました。
とある大きな町の孤児院にいる、アイビーは6歳の女の子です。他のこどもたちは、クリスマスの三日間、親切なおじさまやおばさまのところで、預かってもらえることになっていますが、アイビーだけは、汽車に乗って別の施設に行かなければなりませんでした。
でもアイビーは、自分はおばあちゃんのところへ行くと言って、途中で汽車をおりてしまいます。アイビーのおりた町は、ホリーがいるおもちゃ屋さんのある町でした。ウインドウのガラスごしに二人は出会います。この町には、ジョーンズさんの奥さんがいました。クリスマスの支度をしながら、こどもがいたらと考えていました。<クリスマスには、ホリー、アイビー、ジョーンズさんの奥さんが出会います。そこは、とてもあたたかいうちでした。
本を手に取って読んでみてください。
みんなの願いがかなう、すてきなすてきなクリスマスの絵本です。
                                                           (もえぎ野web文庫 森田和子)



おさるとぼうしうり

昔、あるところに、帽子を売り歩く行商人がいました。この帽子売りは、品物を頭の上にのせて歩いていました。ですから、帽子が落ちないように、背筋をしゃんと伸ばして、「ぼうし、ぼうし、ひとつ50えん!」と、大きな声で呼ばわって歩きました。
ある日のこと、朝から歩き回っても帽子は一つも売れませんでした。お昼になっても帽子は売れず、お腹が空いてもご飯を食べるお金がありません。
そこで町を出て、田舎の方へ歩いて行きました。すると、ひとやすみするのにもってこいの大きな木を見つけました。帽子売りは、頭の上の帽子を落とさないように、そうっと地面に腰を下ろし、木にもたれて眠ります。
長いこと眠った帽子売りは、目を覚 ましてびっくりします。売り物の帽子が一つもなくなっているのです。木を見上げると、枝という枝におさるがいて、そのおさるはみんな帽子をかぶっています。さあ、ここから帽子売りが帽子を取り返すため、おさるとの楽しいやり取りが始まります。
落ち着いた色合いのきれいな絵本です。たくさんのおさるが帽子をかぶって木の枝にのっているページのおさるたちポーズも、とてもかわいらしいです。
おはなし会では、「ひとつ50えん!」に、すぐ、「やす!」の声が返ってきます。昼寝から覚めた帽子売りの帽子がなくなっているのにも、すぐに気づきます。帽子売りとおさるのやり取りには大喜び、読み終わった後でおさるのまねをする子もいます。

                                             (もえぎ野web文庫 森田和子)


あたしもびょうきになりたいな

エドワードが病気になりました。
お母さんは、ごはんをベッドまで運んでやり、お父さんは、おでこに冷たいタオルをあててやっています。おばあちゃんは、ベッドの横で本を読んでやり、おじさんとおばさんからは、お見舞いの電話がかかってきました。一方、元気なエリザベスは、起きて洋服を着、ベッドをきちんとして学校へ行かなくてはなりませんでした。
学校から帰ると、宿題にピアノの練習、お手伝いにペットの世話もしなくてはなりません。家族のみんなからちやほやされるエドワードが、うらやましくてたまらない エリザベスは、「あたしもびょうきになりたいなあ!」と思います。
そうしたら何日かたって、エリザベスは本当に病気になってしまいます。望み通りに、みんなから大事にしてもらいます。ところが今度は、病気が治って学校へ行ったり、宿題をしたり、お手伝いをしているエドワードがうらやましいのです。
何日かたって、エリザベスは元気になりました。ここからのエリザベスの表情や動きのなんといきいきとしていることでしょう。 そして、エドワードとふたりで、病気の時にお世話になった家族にすてきなお返しをします。
誰でも一度は、エリザベスと同じ気持ちになったことがあると思います。そして、元気に学校へ行けることに感謝です。
                                                       (もえぎ野web文庫 森田和子)

 
 
 


はなのあなのはなし
表紙の大きな黒い二つの丸は、鼻の穴です。
ページをめくっていくと、いろいろな大きさや形の鼻の穴が見開きいっぱいに見事に並んでいます。ほとんどの動物たちの鼻の穴も二つありますが、いるかの鼻の穴はひとつです。あざらしやかばの鼻の穴は、水に潜るときにはピタッと閉じる便利な鼻の穴です。
「鼻の穴には、鼻毛が生えているけど、その役目は何だろう?」
「鼻の中はどんなふうになっているのかな?」
その答えが、わかりやすい絵と楽しい文で書かれています。
鼻くそのでき方や、きれいに並べられた鼻くその絵もあります。鼻血の止め方も教えてくれます。
おはなし会では、裏表紙の小さな黒い丸までたっぷり楽しんでくれます。花粉症でくしゃみ、鼻水、鼻詰まりと苦しい季節ですが、この絵本で笑い飛ばしましょう。
この作者のからだの絵本は、「おっぱいのひみつ」「かさぶたくん」「おへそのひみつ」「おしっこのけんきゅう」「むし歯のもんだい」等たくさんあります。。
                                                 (もえぎ野web文庫 森田和子)


くんちゃんのはじめてのがっこう

こぐまのくんちゃんは、今日から一年生です。
早起きをしてご飯を済ませると、お母さんといっしょに学校へ出かけます。道々、くんちゃんは出会ったみつばち、ふくろう、ビーバーに 「ぼく、学校へ行くんだよ。」と声をかけ、スキップをして行きました。
学校へ着いたくんちゃんは、お母さんと離れて教室に入ります。教室は、上級生もいっしょでした。先生は、上級生に授業を始めます。 教科書を読んだり、字を書いたり、算数の計算をしていますが、くんちゃんは、どれもできません。くんちゃんは、いすのうえでだんだん 小さくなっていき、教室から外へ飛び出してしまいます。くんちゃんが、窓からのぞいていると一年生の授業が始まります。
「自分の名前と同じ音で始まる物の絵を描きなさい。」と、先生は言います。これなら、くんちゃんもできます。席に戻るとたくさん描きました。
「とてもよくできましたね。」と、先生に言われたくんちゃんは、その絵を家へ持って帰り、お父さんとお母さんに見せました。こうして、くんちゃんの学校一日目が終わります。
一年生になる喜びと不安でいっぱいだったくんちゃんも、楽しい学校生活が始まりました。
どの一年生も、くんちゃんのように学校へ行くのが楽しくなりますようにと思います。
                                                       (もえぎ野web文庫 森田和子)


あくたれラルフ

セイラは猫を飼っていました。名前はラルフ。このラルフ、たいへんなあくたれでした。
セイラがバレエのお稽古をすればからかい、セイラがのっているブランコの下がっている枝を切ってしまいます。おまけにセイラのパーティをめちゃめちゃにしてしまいます。また、あるときには、お父さんの大切にしているパイプでシャボン玉を吹いたりしました。自転車で食堂に飛び込んで、テーブルに衝突したり、お母さんのかわいがっている鳥を追い回して、お母さんを悲しませました。でも、セイラはラルフが大好きでした。
ある晩、みんなでサーカスを観に行きます。そこでラルフは、空中ブランコにぶら下がり、綱渡りをしている人をつきとばしたり、馬に乗って、曲乗りしている芸人を突き落としたりと大暴れです。これにはお父さんも「今日のラルフのいたずらはひどすぎる。」と怒って、ラルフをサーカスにおいていきます。サーカスの団長さんは、ラルフにたくさんの仕事を命じます。働くのに疲れたラルフは、仕事を断ると檻に放り込まれてしまいます。なんとかサーカスから逃げ出したラルフですが、行くところがありません。ラルフは、ごみバケツの上に座っていました。
そこへ、セイラが探しに来てくれました。家へ帰るとお父さんとお母さんも喜んで迎えてくれました。やわらかいベッドと、温かいミルクがある家と、愛してくれる家族がいる幸せに、ラルフはもう二度とあくたれはしまいと思いましたが。

                                                                 (もえぎ野web文庫 森田和子)




ピエールとライオン

「ぼく、しらない!」としか言わない男の子がいました。
お母さんが、「おはよう」と言っても、「ぼく、しらない!」。もちろん、お父さん にも、「ぼく、しらない!」としか言いません。だから、お父さんとお母さんが一緒に出掛けようといっても、出かけずにいつもお留守番です。そんな時、腹ペコライオンがやってきて、「食われちまうって知ってるだろう?」と聞かれても、「ぼく、しらない!」としかピエールは、言いません。そこでライオンは、「ごちそうさま」と食べてしまいます。
六時にお父さんとお母さんが、帰ってきてびっくりぎょうてん。ピエールのベッドに、病気のライオンが寝ています。お父さんとお母さんは、ライオンのひげをひっぱたり、椅子でひっぱたいたりして、ピエールの居場所を尋ねます。すると、「ぼく、しらない!」の声が聞こえます。さあ、そこでお父さんとお母さんは、ライオンを町のお医者さんまで運びます。そして、ピエールは無事にライオンのおなかの中から救出されます。
すると、なんと、ピエールはきちんと返事ができるようになっていたのです。
この絵本、おはなし会では、3,4年生の男の子が特に喜びます。ちょっと反抗したい気持ちをやってくれて、笑っていた子たちも、ライオンに食べられちゃうとシーンとして、お父さん、お母さん、お医者さんの協力で助け出されるとうれしそうです。
おはなし会が終わり、先生が「机を元に戻しなさい」と言うと、「ぼく、しらない!」の声が聞こえてきました。すかさず先生、「はい、わかりました。」でしょうと、返しました。さすがです。「ピエールとライオン」、「アメリカワニです、こんにちは」、「ジョニーのかぞえうた」、「チキンスープ・ライスいり」の4冊の豆本セットもちいさなえほんばことして、でています。(もえぎ野web文庫 森田和子)


ふわふわくんとアルフレッド

ふわふわくんは、おもちゃのくまです。アルフレッドが赤ちゃんのときから、ずっと友達でした。ごはんを食べるとき、遊ぶときやテレビを見るときはもちろん、夜寝るときも一緒でした。
ところが、ある日アルフレッドに新しいおもちゃが届きます。とらのしまくんです。それからというもの、ふわふわくんは、おもちゃばこに放り込まれてしまいます。アルフレッドと一緒にいるのは、しまくんになりました。
アルフレッドが、裏庭の大きな木の下におもちゃばこを持ち出して遊んでいたとき、「どうして僕も仲間に入れてくれないの?」という声がします。見るとふわふわくんがたっていて、「僕だって一緒に遊びたいよ。」と言いました。
けれども、アルフレッドは、ふわふわくんを遠くへ放り投げ、僕は新しいとらのおもちゃと遊ぶと言いました。
すると、ふわふわくんは、そばの大きな木に登ってしまいました。びっくりしたアルフレッドが、一緒に遊ぶから下りてきてと頼んでも、だめでした。お父さんとお母さんが、梯子を持って来ても届きません。そこで長い棒を取りにいきます。
そして、棒を持って戻ってきたとき、ふわふわくんとアルフレッドとしまくんは一緒に遊んでいました。さあ、ふわふわくんは、どうやって下りてきたのでしょう?

                                               (もえぎ野web文庫 森田和子)


かとりせんこう

夏に欠かせないものと言えば、やっぱりこれです。「かとりせんこう」
この絵本の「かとりせんこう」は、普通のかとりせんこうではありません。
まず、煙がもんもんと流れていくと、蚊がぽとんと落ちます。煙が増えていくと、落ちる蚊の数も増えていきます。そして、部屋に飾ってあるお花までぽとんと落ちてしまいます。さらには、おじさんの読んでいる新聞の文字がぽとん。おじさんのメガネ、おひげ、浴衣の模様までもがぽとん、ぽとん。ついに、煙は窓の外へ流れていき、町の中の色々なものを落としてしまいます。とうとう、煙はお月さまのところまで届きます。さあ、お月さまは、何を落とすでしょうか?
田島さんの筆による煙が、本当にみんな落としてしまいそうな勢いがあります。町の人たちのびっくりした表情も楽しいです。おはなし会の時に今の子どもたちは、かとりせんこうを知らないかと思って聞いてみると、みんな知っていました。幼稚園の子が「ぶたのいれものに入っているよ。」と教えてくれました。
子どもたちは、ぽとん、ぽとんの音を途中から一緒に言って楽しみます。いろいろなものが落ちるたびに、「えー」「まじ」という声が聞こえてきます。「けむりがもんもん」「ぽとんぽとん」子どもと一緒に声を出して楽しめる絵本です。  (もえぎ野web文庫 森田和子)


かえでがおか農場のなかまたち
かえでがおか農場にいる動物たち。
4ひきの猫、2ひきの犬、5頭の馬、豚、牛、羊、にわとり、がちょう達、そして近所や野生の動物まで。。。。猫のページ、犬のページ、鶏のページ、馬のページにはみんな名前がついていて、性格がよくわかるようにストーリー仕立てで紹介されています。
いつも4ひきくっつきあって寝ているネコたち・・・
トイレにいることが多い、おばあさんのタマゴザケ。
キレイだけれどみていてもおもしろくないヤナギ。
やさしいお母さんのグスベリーはせっせと子ネコを運びます。
マックスは小さな生き物にちょっかい出しては遊ぶのが大好き・・・

大画面いっぱいに生き生きと描かれる動物たちの表情は、とてもユーモラスでみていて飽きません。あぁ、子どもたちが小さい時にこの本に出逢っていたら、どれだけ繰り返し楽しく読めただろうかと思いました。
おうちで猫や犬を飼っている子どもにとっても、これだけたくさんの動物が飼われている様子は迫力満点でしょう。動物好きにはたまらない一冊だと思います。
かえでがおかシリーズには『かえでがおか農場のいちねん』という絵本もあり、こちらは季節という切り口で、農場のくらしや動物たちの一年間が詩的に描かれます。素敵な絵本ですが、『なかまたち』を読んで、ひとつひとつの顔に親しんだ子どもたちには、動物名だけではちょっと物足りないかもしれません。。。!  (もえぎ野web文庫 座間彰子)


おばけリンゴ
ワルターというちょっとさえないおじさんが主人公のお話。
ワルターが持つリンゴの木は、実をつけたことも、花を咲かせたこともありません。 毎年たくさんの花を咲かせて、たくさんの実を収穫しているよその庭のリンゴの木をみて、 ワルターは羨ましくてたまりませんでした。
ある日ワルターは祈りました。
ひとつで いいから、うちのきにも リンゴが なりますように。
そんなに りっぱな みでなくてもいいのです。
ひとつで いいから ほしいのです。
ある春の夜、願いが叶って、ワルターのリンゴの木にも花が一つ咲きました。嬉しくなったワルターは、昼も夜も花の番をして、雨風から必死で花を守ります。
夏になると、花はちいさな実になりました。もうワルターはうれしくてたまりません。秋がくると、リンゴは日増しに大きくなりました。しかしここから、ワルターの苦労が始まります。そのうちに、だれかに とられやしないか、しんぱいになってきました。とおりがかりのひとだって、しんようはできません。あと一日あと一日と、取るのをしぶっていたら、リンゴはとてつもなく大きくなってしまいました。ワルターは、お化けのように大きくなったリンゴを、市場にもっていって売ろうとしますが、さっぱり売れなくて・・・・
色鮮やかなページのなかで、とりわけ夜のページが心に残ります。子どもが落書きしたようなタッチの画や、リュウや秘密警察が登場するストーリ展開にはナンセンスなエッセンスもいっぱい。人生経験を積んだ大人にはどこまでも深く、子どもには単純なところで楽しめるお話です。苦労した末に最後にはリュウに食べられてしまうおばけリンゴ。しかしワルターは、もう一度リンゴが欲しいとお祈りします。
さて、今度はなんとお祈りしたのでしょう・・・・?是非手に取って読んでみてください。
                                                                             (もえぎ野web文庫 座間彰子)


びっくりまつぼっくり

まつぼっくりの秘密がいっぱいの科学絵本です。まつぼっくりを見つけた「ぼく」は、いくつも拾いあげていきます。子供は、まつぼっくりが大好きですよね。
ヒダの中には薄い松の種が入っていて、飛ばしてみると、ひらひらくるくるまわります。
このヒダは、晴れた日と雨の日で、開いたり閉じたり…。ぼくのも、雨に濡れると「びっしょり しょんぼり まつぼっくり」になってしまいました。でも、乾くとまた「はりきり まつぼっくり」に!
絵本の最後には、まつぼっくりの手品も紹介されています。実際にまつぼっくりを拾って、お子さんと一緒に遊びながら、発見を楽しんでみてくださいね。文章が易しく幼児向けの絵本となっていますが、小学生でも目を輝かせて喜んでくれるはずです。
まつぼっくりは種を守るためにあって、晴れて開くと、ヒダの間にある種が風で飛ばされていくのです。作者の多田多恵子さんは、植物生態学を専門とする理学博士。子供達に、楽しく植物に興味を持たせてくれる素敵な絵本です。    (もえぎ野web文庫 野阪麻代)


トムテ
トムテはスウェーデンの農家や仕事場に住んでいる小人です。
小さくて目立たないので、人の目には触れません。何百年も生き続けて、その家の人々の幸せを見守り続けています。トムテを大事にすれば、夜番や仕事の手助けをしてもらえるといわれています。
ある寒い冬の夜、みんなが寝静まった頃、トムテはいつもの見まわりに出かけました。食料小屋、牛小屋、馬小屋、羊小屋、母屋・・・ひとつひとつ戸締りを確かめ、見まわります。 トムテの一番の楽しみは子どもたちの寝顔を見ること。トムテはいつの時代も子どもたちを見守ってきました。この子どもたちのお父さんが子どもだった時も、おじいさんが子どもだった時も。
「人はどこからきて、どこへ行くのだろう」ずっと生きるものたちを見守ってきたトムテのつぶやきは、哲学的であり、人も自然の大きなサイクルの中に組み込まれていることに気づかされます。
この絵本は、詩人リードべリが1882年に発表した「トムテ」という詩に、現代の画家ウィーベリが美しい絵をそえてできました。「トムテ」の詩は100年以上たった今でも、スウェーデンの人びとにひろく親しまれています。
『トムテ』は、とても幻想的な絵本です。哲学的な部分もありますが、不思議とこの静かな世界観に子どもも大人も惹きつけられることでしょう。ぜひ手に取り、しんと静まり返った北欧の冬の夜に想いを馳せてみてください。
                                                 (もえぎ野web文庫 佐藤靖子)


ちゃぼのバンタム
めんどりが温めていた卵の中にひとつだけはいっていたチャボの卵。 とりわけ小さいのでバンタムと呼ばれ、バンタムは一番大きなおんどりのたいしょうに いつもいじめられていました。君はあたまがいいしすばしこいじゃないかと、ぶたやあひるにほめられても、自分に自信がもてずにいつも情けない思いをしていました。
市場でバンタムが売られることが決まっていた日の朝のこと----
「きつねだ きつねがきたぞ!にげろみんな!」かけすのけたたましい声で動物たちは飛びおきました。他の動物たち、たいしょうも大慌てで逃げてしまうのですが、めんどりのナネットが逃げ遅れ、きつねにしっぽの羽をくわえられてしまいました。愛らしいナネットが大好きなバンタムは一羽で残り、命がけできつねに立ち向かいます。羽を飛び散らして闘う決闘シーンはものすごい迫力。やがてきつねは降参して逃げて行きました。
「コケコッコーォ!ぼくはナネットをまもったぞー!ぼくはこの農場をまもったぞー!」 その勇姿に飼い主はバンタムを売りに出すのをやめ、お礼をいわれたバンタムははにかみながらダンスをして、ナネットに自分の恋心を伝えます。
ロジャー・デュボアザンの描く動物たちはとてもユーモラスで表情豊か。 成長とともに生まれる序列関係や淡い恋心・・・子どもたちもひとごとではないかもしれません。のどかな農場で起こった出来事が、 大切なのはおおきいことではなく、勇気だよと教えてくれます。
お話とは関係ないですが・・・格闘技のバンタム級は鶏の小柄な品種を示すバンタムから由来した言葉だそうです。2017年、小さくてもバンタムのように勇気のもてる1年になりますように。 (もえぎ野web文庫 座間彰子)


ゆうかんなアイリーン

風邪をひいて具合の悪いお母さんに代わって、アイリーンはお母さんの縫い上げたドレスを遠いお屋敷に届けるために、吹雪の中を出かけていきます。
「まけるもんか」と進むアイリーン。
しかし、強い風にドレスが吹き飛ばされてしまうのです。それでも「行って、おくさまにご報告しなくちゃ」とお屋敷を目指します。日が暮れて道に迷ってしまい…何度も襲う試練にドキドキハラハラしながらお話に引き込まれます。
どんな困難があっても、お母さんへの深い愛情がずっとアイリーンを支えていますし、最後の場面では、子どもを信じるお母さんとの絆をさらに強く感じて、温かい気持ちになります。
寒い冬にぴったりの絵本です。
     (もえぎ野web文庫 野阪麻代)                                        


きみなんかだいきらいさ
ジェームズと ぼくは いつも なかよしだったよ
誕生日パーティにもよんでやったし
クルクルクッキーもわけたし
がわがわのがまがえるがいるところもおしえてやったし
みずぼうそうにもいっしょにかかったんだ
でも きょうは ちがう-----
ジェームスなんか だいきらいさ
登場人物はジェームスとぼくのふたりだけ。
仲良しだったり仲たがいするふたりの姿だけが表情豊かに描かれます。
ぼくの怒りの気持ちはおさまらないままページはすすみ・・・・
とうとうぼくはジェームスをやっつけてやろうと思い立ちます。
雨の日に、長くつをはいて、傘をさして、・・・・クレヨンをスープにいれたり、学校へこさせなくするんだと思いながら、絶交をいいわたしにジェームスの家まで出かけるのです。
そしてとうとう決裂
さいならあー
さいならあー
二十数ページの絵本のなかで二十ページほどは、だいきらいがあふれているのですが、最後の2ページで仲直り。 いったいどんな急展開があったのでしょうか?気がつくと雨も止んで太陽が出てきています。だいきらい、だいきらい、という言葉の繰り返しに
胸がきゅんとしてしまうのは、大人も子どもも同じようです。
一見読み聞かせにむかない、手のひらサイズの小さな絵本ですが、おしくらまんじゅうのようにくっついてもらってから読むと、ふたりの友情を真剣に見守る子どもたちの素敵な笑顔に出会えます。   (もえぎ野web文庫 座間彰子)

                                  


おおきくなるっていうことは

おおきくなるってどういうことかな?
子どもたちにも分かりやすい例をあげながら
繰り返しの言葉とシンプルな絵で、綴られています。
「おきくなるっていうことは ようふくがちいさくなるってこと」
「おおきくなるっていうことは まえより たかいところに のぼれるって こと」
こんな身体的な成長はもちろん、
「(たかいところから)とびおりても だいじょうぶかどうか かんがえられるってこ とも おおきくなるっていうこと」
「おおきくなるっていうことは おもしろいことが どんどんみつけられるってこと」
「おおきくなるっていうことは ちいさなひとに やさしくなれるってこと」
判断する力や自発的に考える力、人を思いやる気持ち…、心の成長にも触れていきます。
子どもたちは、ひとつひとつの場面を自分に当てはめて、うなづいたり、
まだよくわからないこともあったり…。いろいろな反応が返ってきます。
幼稚園児・小学校低学年の子供たちだけでなく
もっと大きくなっても、自分自身の成長を振り返りながら
その年齢に応じて、読むたびに気づくことがあるのです。
自分のお兄ちゃんお姉ちゃん、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんの歳を
数えながら、年齢を重ねていくことに対して新たな感覚が芽生えるかもしれません。
最後は
「またひとつ おおきくなった おめでとう みんな」
大きくなるって素敵なこと!と実感して嬉しい気持ちになれる、
進級の時期にぴったりの絵本です。    (もえぎ野web文庫 野阪麻代)

                                          


ガンピーさんのふなあそび

これはガンピーさんです。ガンピーさんは舟を一そう持っていました。
ガンピーさんが舟を漕いでいると、途中「いっしょに連れてって」とこどもや動物たちがつぎつぎにやってきます。
「いいとも」「けんかさえ、しなけりゃね」とガンピーさん。
男の子、女の子、うさぎ、ねこ、いぬ、ぶた、ひつじ、にわとり、うし、やぎといった動物たちが舟に乗りたがり、そのたびにガンピーさんは、してはいけないことを1つずつ約束させて乗せてやります。
ところが舟がいっぱいになってきたところで、どうぶつたちはいわれたことなど忘れて、つぎつぎとあばれだします。。。とうとう舟はひっくりかえり、全員びしょぬれになってしまいます・・・
コラーーー!と怒る場面は一切なく(笑)皆で濡れた身体をかわかし、ガンピーさんの家でお茶をごちそうになります。2ページにわたって描かれるお茶の時間の楽しそうなこと!
初めての子育ては積み上がっていかないことの連続。ちょうど煮詰まっていたときにガンピーさんのお話に出逢い、帰りぎわ動物たちに声をかけるガンピーさんの最後のセリフ「またおいでね。」に涙がこぼれました。以来、ガンピーさんの温かさは私の育児の大きな指標となりました。もちろん子どもたちもガンピーさんが大好きでした・・・・!
新緑まぶしいこの季節になると、手に取って読みたくなる絵本です。
                                                               (もえぎ野web文庫 座間彰子)


かさどろぼう
スリランカの小さな町に住むキリ・ママおじさんは、町に出たときに
生まれて初めて傘を見て、「なんてきれいで便利なものだろう」と
買って帰ることにしました。
ところが、帰り道にお店でコーヒーを飲んでいると、傘はなくなって しまったのです。
その後、何度傘を買っても、その度に盗まれてしまいます。
とうとうおじさんは犯人を捜すことに…。
さて、いったい どろぼうは誰だったのでしょう。
ドキドキしながら読み進めていくうちに、お話に引き込まれていきます。
再三 傘を盗まれて困っているはずなのに
「どろぼうが 傘をぬすんでくれて、よかったなあ。
おかげで  傘の店ができたのだから。お礼をいいたいくらいだよ」
と感謝するほど おおらかな人柄のおじさん。
そして、「どろぼうはおじさんに会えて嬉しそうでした」
と、心温まる場面でお話は終わります。
ユーモアがあり、さわやかな気持ちになれる絵本です。
作者はスリランカを代表する世界的な絵本作家。
色鮮やかでいきいきとして絵も魅力的です。
                                                               (もえぎ野web文庫 野阪麻代)


ちいさなふるいじどうしゃ
運転手さんが水をもらってきている間に、ちいさなふるいじどうしゃが
勝手にひとり走り出してしまうところから、お話ははじまります。
走っていくと、さいしょにどうろで石飛遊びをしている、1ぴきのかえるにであいます。
「ああ、おねがいだよ、じどうしゃくん。
まっててよ、すぐにきみのとおりみち どくからさ!」
「いやだ!ぼくはいやだ!
そんなことはおことわりだ。まっててなんかやるもんか!」
そうして全速力ではしってぶつかったので、いしとかえるはくうちゅうにはねとばされました。その後うさぎやあひる、めんどりにうし、おひゃくしょうのおばさんに出会い、みな同じようにまっててとおねがいするのですが、
「いやだいやだ!まっててなんかやるもんか」
といって全速力でぶつかって、次々にはねとばしてしまうのです。 とうとう踏み切りにやってきて、汽車に遭遇。「しゅっ!しゅっ!ぽっ!ぽっ!まっておいでよ、わたしはすぐにみちをわたってしまうから!」しかしちいさなふるいじどうしゃは、やっぱり「いやだ!」といって全速力で線路のまんなかにつっこんで、ぼっかーん!がっしゃーん!バラバラの部品になってしまうのでした。
そのやり過ぎ感に、大人は少しひやりとしてしまいますが、子どもの反抗心をこれでもかの繰り返しで十分に満たしつつ、度を越したことによる天罰とその後の温かい結末により、最後は子どもも大人もひと安心できる絵本になっています。
このお話は、おもちゃの車ををぶつけっこして夢中で遊ぶ甥っ子たちをみて、生まれた作品だということです。窓枠のような四角効果で、車に乗っているような臨場感もあり画もユーモラスで楽しい絵本です。
                                                               (もえぎ野web文庫 座間彰子)


おばけのジョージ―
アメリカ、ニューイングランドの小さなむらの、ホイッティッカーさんのお家にすむおばけのジョージ―。ジョージ―は、まいばん おなじじかんに かいだんをみしりといわせ、ひろまのドアを ぎーといわせました。
その音で、ホイッティカーさんとおくさんには もうねるじかんだと わかり、ねこのハーマンには ねずみをさがしまわる じかんだとわかりました。ふくろうのオリバーには めをさまして 「ほーほー!」となくじかんだとわかるのでした。
ところがある日、ホイッティッカーさんが階段のゆるんだいたにくぎをうち、ドアのちょうつがいに、油をさします。”ぎぃー”も”みしみし”もなくなりました。音がなくなったので皆は時間がわからなくなり、生活のリズムが乱れます。居心地が悪くなったジョージも、あたらしい住処をさがさなければならなくなりました....そして次に入った古い洋館では、恐ろしい思いをすることになります。
古家におばけ・・・みしりみしりとなる階段の音、ぎーとひとりでにあくドア・・・怖いですよね。でもジョージはかわいらしく、ジョージがたてる古家の物音は、住む人や動物にとっても大切なものであったことが、とてもユーモラスにあたたかく描かれています。
みしりみしり、ぎぃー、ほーほーのところをできるだけ恐ろしい感じで読むと、このお話の面白さが倍増する気がします。ちょっとご愛敬な「ガタ」が、実は大切なのだと気づく年齢にもなりました。図書セミナーで伊藤千代子先生に読んでいただいた「おばけのジョージ―」はとても素敵で、いつまでも心に残っています。
徳間書店から、続編がシリーズで出版されています。自分で本を読めるようになってくるころにおすすめです。
                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)



ぼくのいちにち どんなおと
朝、目を覚ましてから「おやすみなさーい」と夢の中に入るまで、こうちゃんは様々な音に囲まれて過ごします。例えば、顔を洗うときは…
「ぴちゃら ぱちゃら ぷるぷるぷる
 ぺしゃら ぱしゃら ぷるぷるぷる」
いたずらをした こうちゃんを叱るママの言葉は…
「ままもめ むめめ まみむめ もめめ
 むかもかめか まかもけめけ がみげめごもきい」
そういえば、英語で動物の鳴き声は
「コケコッコー」ではなくて「cock-a-doodle-doo」
「ブーブー」ではなくて「oink oink」
「メー」ではなくて「baa」……
と知ったとき、外国人には日本人と違うように聞こえるのかと新鮮でした。同じ日本人でも、ジャズピアニストである作者の豊かな感性を通すと生活音さえもリズムとなって動き出すようです。絵も、音の部分だけが立体のコラージュで表現され、生き生きと描かれています。先入観のない子供たちはヘンテコな表現も大好き。一緒になって自由な音を楽しみたい絵本です。舌を噛みそうだから、読み聞かせをするときにはたくさん練習をしたほうがよいですね(笑)   (もえぎ野web文庫 野阪麻代)


ものぐさトミー
トミー・ナマケンボは電気じかけの家に住んでいます。朝になると、トミーの寝ているベッドは自動的に傾き、熱いお湯の入った風呂おけにトミーを落とします。風呂おけには水かきまわし機がついているので、トミーが何もしなくても体を洗ってくれます。
次は乾燥室へと移動、体が乾くと電気歯ブラシが出てきて、トミーの歯をみがいてくれます。着替え、食事と、トミーは自分から一切動くことなく、すべてが自動で行われていきます。何もしなくていいなんて一見すばらしい装置のように思うのですが、トミーに笑顔はありません。すべてにうんざりしています。 そしてある嵐の晩、トミーの家が停電します。電気じかけの家はすべてが止まってしまいます。ものぐさなトミーは一体どうなるのでしょうか…。
これでもかという展開に、思わず「えー!」と声を出して笑ってしまうことでしょう。あまりのやられようにトミーがかわいそうになってしまうほどです。少し長い絵本ですが、次から次へとおかしいことが起こるので読んでいて飽きません。
この絵本は50年前に出版されましたが、時代がこの絵本に追いついたのか全然古さを感じません。出版当時にはなかったオール電化住宅や電動歯ブラシが現実となった今、便利さを追求する大人への風刺にも思えます。
                                                                 (もえぎ野web文庫 佐藤靖子)


かえるの平家ものがたり
平家物語のパロディ絵本です。
ぺんぺんぺんと、しわだらけのがまじいさんが、げんじぬまのかえるの子どもたちに
どれどれ みんなも こっちにおいで、げんじと へいけの たたかいの 、むかしばなしを してあげる 、とはじまります。
とのさまがえる ひきがえる あまがえる あかがえる、たくさんのかえるが登場しますが、ふえふき うしわかまるぼうやで登場する かじかがえるは役にふさわしく、鳴き声が鳥のさえずりのように美しい蛙です。
対する平家はなんと猫。いちまんびきのかえるの大軍、合戦風景は大迫力、バッタに乗って、草花の武器を身につけ戦いに挑む蛙たち

ささの はっぱの ひたたれに
まっかな のばらの ひおどしよろい
くるみの からの かぶとには
のばらの いばらの くわがた かざり
てには とくさの ゆみを もち
まつばの やを にじゅっぽん

草花の武器では役立たず、いったんは負け戦となりますがうしわかまるの機転と勇気で猫に打ち勝ちます。
とうとう ねこは ぬまのそこ
それから ちいさな かにになり
ぬまのそこで くらしたそうな
へいけがに というそうな

最後のページには、ヘイケガニのイラストが描かれています。
かえるのへいけものがたり これでおしまい これっきり
そうしてこもりうたとともに静かなお昼寝タイムになってお話は終わります。実際の平家物語と比べれば、かなりあっさりとしたストーリーなのですが、合戦風景の画が素晴らしく、草花が好きな大人の遊び心も満たしてくれ、歴史への興味をそそるに十分な魅力を持った絵本だと思います。
五七調でリズムよく読めて、特に合戦シーンでは男の子の目がかわります。
                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)


ポインセチアはまほうの花
メキシコのクリスマスのお話です。
メキシコではクリスマス前の9日間、夜になるとみんなで歌いながら近所の家をたずねてまわるポサダというお祝いをします。ポサダにはおくりものが必要です。ファニータの家では今年、ファニータのお父さんの仕事がなくなり、ポサダのお祝いが出来ませんでした。 おもちゃを買うお金もお菓子を買うお金もありません。
人形のお店のロホさんは、ファニータにクッキーをくれました。お友だちは、手ぶらでいいからポサダに一緒に行こうと誘ってくれます。 お父さんは来年は新しい仕事をみつけてちゃんとポサダをしような。そしてごちそうを食べようとギターを取り出し歌をうたいます。 質素でも描かれたあたたかい家族の画は幸せそのものです。しかし教会に行く時間になると、ファニータの目から涙がこぼれてくるのでした。
「あたし、いかない。だっておくりものがないんだもの。ママにも、パパにも、おとうとたちにも、イエスさまにだって!」
あなたの心がおくりものよとお母さんは優しくファニータを諭します。しかし教会についてからも、おくりものがない理由で外のものかげにかくれ、なかへ入れません。そして教会から聴こえてくる歌声にあわせて口ずさみながらまた、涙があふれて出てきてしまうのでした。
「クリスマスをいわいたかったな。パパの仕事がうまくいっているときはすごく楽しかったのに。」
贈り物をもらう立場の日本の子どもたちも、贈り物が用意できないファニータも 親の懐事情と深くかかわっている点ではまったく同じでしょうか。おはなしでは、天使から緑の葉っぱをたくさんもらって、それが見事な赤い花々となり素敵なおくりものとなります。ファニータの心を映し出すような色鮮やかな画のラストがとても綺麗です。
ポインセチアはメキシコ原産の植物で、ポサダはイエス様をみごもったマリアとヨセフが、ベツレヘムをめざして旅をするという聖書のなかのお話にもとづくメキシコの伝統行事。作者はメキシコに15年住み、ポサダの期間のメキシコは妖精の国のようだった。大聖堂でおこなわれるクリスマスのミサがすばらしくて忘れられないとその思いを最後のあとがきに記しています。この時期あちこちにみられるポインセチアに伝わる素敵なお話です。(もえぎ野web文庫 座間彰子)




ふゆのあさ

冬の朝、しずちゃんが目を覚ますと、なんだかいつもとちがう。とってもしずか。
あっ、もしかしてそうかもしれない……
ぜったいそう、おねがい!
ページをめくるごとに、しずちゃんの期待はどんどん膨らんでいきます。
ほら、やっぱり、ゆきだよ!
お話会では、子供たちもこの場面で目を輝かせてくれます。しずちゃんと一緒になって想像力がどんどん広がっていくようです。雪の日の朝の静かな気配、そして日常の生活を送りながらも雪に心惹かれる子供のワクワクドキドキ感が見事に表現されている絵本だと思います。そうそう、そうだったと読んでいる私も、胸の奥にあった子供の頃の気持ちが懐かしく思い出されます。
そして、しずちゃんは犬のシロと一面の雪の世界へ飛び出していきます。
雪が降ったら何して遊びたい?
雪だるまを作って、そりに乗って、雪合戦して…。
読み終えてから子供たちとの会話も弾みます。
雪が降り積もる日は少なくなりましたが、絵本とともに、この冬もこんな雪の日の朝を迎えられたらよいなと思います。(もえぎ野web文庫 野坂麻代)
 


てぶくろがいっぱい

ネッドと、ドニ―はふたごです。ある日、ドニ―が「あかいてぶくろ」をひとつなくしてしまいました。ふたりで「あかいてぶくろ」を探していることが、近所のひとたちに知れ渡ると、これ、君たちのじゃないかしら・・・?
つぎつぎにどこかで落ちていた「あかいてぶくろ」を届けに来てくれるようになりました。
そうして集まった「あかいてぶくろ」はなんと10まい。その後もつぎつぎに届けられます。こんなにたくさんどうしよう。。。
ネッドがいいことを思いつきます。物干しロープに「あかいてぶくろ」をつるして、落し物した人に、はりがみを出そう。『あかいてぶくろをなくしたひとへうちのうらにわをのぞいてみてください。』この思いつきは大成功。
てぶくろをなくしたとき、おとうさんとおかあさんは旅行中で、家にはおばあちゃんがとまりにきてくれていました。 てぶくろをもうなくさないようにと、スナップで留めてくれたり、間違って届けられたてぶくろをきちんと引き出しにしまってくれたり・・・ おばあちゃんの様子やせっせと届けてくれるまちの人々の言葉のひとつひとつに優しさがにじみ出ていて、幸せな気持ちになります。
すべて「あかいてぶくろ」だらけになるところも面白く、ロープにずらりと並ぶ「あかいてぶくろ」と、てぶくろを持って歩く人びとの行列がにぎやかで楽しい。このお話はご夫婦の作品で、孫である双子の男の子がモデルになっているそうです。 人を動かすものの本質が描かれているようで、素敵なお話です。(もえぎ野web文庫 座間彰子)


 
 


たんぽぽ

はるが いっぱいになる
たんぽぽは おおきな はなを
とくいそうに さかせる。
さむいひは いそいで ねむる。
あたたかいひは ゆっくり ねむる。
みどりのほっぺたが
ふくらんでいる かれた
はなびらの したに
なんだか しろいものが みえる。
わたげだ!
まっしろの わたげだ!

花が終わっていったん茎を横にたおした後に、再び起き上がって、少しでも種を傷めてなるものかと、慎重に慎重にゆっくりと、まわりの空気をも動かさないようにひらくわたげ。
作者の甲斐信枝氏は、その”生きて動いている”一部始終を観察して「無事開き終わった わたげの一本一本の 旅立ちを見送り 静かにたおれていく たんぽぽの茎には、母親の悲しみがあふれている」ように感じたそうです。絵本ではわたげがひらき 飛んでいく場面は、その感動を伝えるように仕掛けの見開きページとなっていて大画面になります。

なんびゃく なんぜんの こどもたちを
こころをこめて みおくった たんぽぽ
しごとを おわったくきは
しずかにたおれて かれていく
しばらくすると
たんぽぽは あたらしい しごとに
とりかかる

2015年4月にご紹介した平山和子氏のかがくのとも「たんぽぽ」も花のしくみや、根の描写などが詳しく面白いですが、この絵本にはたんぽぽの想いが添えられているようで、卒業していく子どもたちに読む絵本としても素敵だなと思います。

                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)
 


びゅんびゅんごまがまわったら
こうすけが怪我をしたことが原因で閉鎖されてしまった自然がいっぱいの遊び場。 それを開放してほしくて、子供たちは新任の校長先生に直談判します。
すると、校長先生から出された条件は「びゅんびゅんごまがまわせるようになった ら…」でした。必死に練習するこうすけ、仲間たちもいろいろな手段を考えて一緒に 頑張ります。
強面で自ら「あまのじゃく」と言って、なかなか許可してくれない校長先生は、 実は子供たちとわざと張り合うユニークな一面も。子供たちを見守りながら、本気 で向き合ってくれる姿がとても素敵なのです。
びゅんびゅんごまや竹馬、カラスノエンドウのさや笛など、懐かしい遊びが出て 来るので、読んだ後に紹介してもよいですね。
子供たちと校長先生のつながりが深まっていくのを感じられる心温まるお話。
ワクワクドキドキの新しい学校生活が始まる4月におすすめしたい絵本です。
                                                                 (もえぎ野web文庫 野阪麻代)
 


アンガスとあひる
『アンガスとあひる』は、知りたがりの子犬アンガスが、 庭の向こうから聞こえてくる音(実はあひるの声)の正体を知りたくて外に飛び出し、あひるに遭遇。アンガスはあひるを威嚇して水飲み場を横取りするのですが、逆にものすごい勢いで追いかけられて、一目散で逃げ帰るというシンプルなお話です。
このお話の最大の魅力は子犬アンガスの視線の高さでしょうか。 なんでもやってみたいのに、届かなかったり、ダメといわれたりしてできないことがたくさんある・・それはちいさな子どもたちのそれと同じです。87年も前に描かれた絵本ですが、色鮮やかな絵はまったく古さを感じさせず、好奇心、不平不満と不遜、恐怖、安堵・・といったアンガスの豊かな表情が、横長の紙面を効果的に使い、見事に描かれていると思います。
シーシーシーシーシーシーシュ!!!あひるの逆襲もすごい迫力。。。(これ、絵本そのまま。本当にあひるって怒らせるとものすごい迫力なのです。)
そして瀬田貞二さん訳の最後の文章がとても素敵です。
とけいの きざむ いち、に、さんぷんかん、
なにごともしりたいと おもいませんでした。
ソファの下に隠れたアンガスの、何ともいえない表情の可愛いらしいこと!
アンガスシリーズは5冊ありますが、 『アンガスとねこ』も、ねこの特性がよく描かれていて、2匹のやりとりが微笑ましい素敵なお話です。是非あわせてお子さんと楽しんでください。(もえぎ野web文庫 座間彰子)



ウミガメものがたり
本能による生命力で生き抜くウミガメの一生を丁寧に描いた絵本。 お母さんガメが産み落とした卵は60日くらいで孵化して、5cmくらいの子ガメが生まれます。
その後、子ガメは日本から1万kmも離れたカリフォルニアを目指します。20年くらい生きると長さ1m、重さも100kgにも成長し、また太平洋を横断して、生まれた砂浜に戻ってきて産卵するのです。
危険をくぐり抜けて子ガメが少しずつ成長していく様子に感情移入をして応援したくなるのは、作者の生き物への深い愛情が感じられるからでしょうか。 繊細な絵が美しく、特に、果てしなく続く青い海の中、まるで生き物の息づかいが聞こえるかのような大画面の見開きページは圧巻です。
一度に100個もの卵が産み落とされても、長い旅を乗り越えて生き残れるのはごくわずか。子ガメの試練は天敵にねらわれる生存競争だけではなく、人間がもたらす弊害であることにも触れられています。生まれたばかりの子ガメが自動販売機の光に誘われて海にたどり着けなかったり、餌になるクラゲと間違えてペットボトルを食べてしまったり、放置されていた網が巻き付いてしまったりするのです。命を守る自然保護の大切さにも気づかされるお勧めの一冊です。   (もえぎ野web文庫 野阪麻代)
 


海のおばけオーリー


生まれたばかりの赤ちゃんアザラシ、オーリーがお母さんのそばですやすやと眠っています。
ある日おかあさんが海に魚を捕りに行っている間に、一人の水兵がオーリーをさらっていってしまいました。持て余した水兵はオーリーを動物屋に売り、動物屋は町の水族館に売りました。オーリーは、その愛らしい姿で水族館で人気者となりますが、海やお母さんのことを思い出しては悲しくてたまらなくなり、とうとう魚をたべる元気もなくなります。オーリーの気持ちをわかってくれる人は誰もいませんでした。
ある日とうとう館長さんは、ぐったりするオーリーに、「これ以上苦しめるのはかわいそうだ。」といって、オーリーの頭を一打ちして殺すよう飼育係に命じます。飼育係が地下室で木づちを振り上げたその時、オーリーが頭をあげました。そしてハッと飼育係は思いとどまり、オーリーを湖に逃がすのです。
オーリ―は広い水の中でぞんぶんに泳ぎ、魚をとり自由を楽しみました。 ところがこれが大騒動を引き起こします。「おばけえー!」 湖におばけが出没するという噂は一気にひろがり、新聞社は号外をだし、見物人が増えに増えてお店は大繁盛。町の人たちは槍や鉄砲を持って湖を大捜索しはじめました。
飼育ががりは、間違って撃たれでもしたら大変と必死にオーリーを探しだし、「つかまってはだめだよ!お母さんのいる海に帰るのだ!」と声をかけます。オーリーは飼育係の手をなめて、海に向かっての大移動を決行することにしました。 ミシガン湖からヒューロン湖、エリー湖、オンタリオ湖を横切り、セントローレンス川を北上し、海に出て生まれ故郷へ。コマ送りのような絵でお話が続いてきましたが、この最後のページだけアメリカ大陸の地図がページいっぱいに描かれていて、オーリーが泳いだコースを一望できます。 やっと海に出たオーリーは泳ぎ回りながら叫んだり吠えたりしました。すると声を聞きつけた大アザラシが一頭そばにきてよくよく顔を覗き込み・・・つぎのしゅんかん、大アザラシはオーリーの鼻をなめていました。オーリーはしあわせな気持ちでいっぱいでした。
最初のシーンと同じ、お母さんに横たわりぐっすりと眠る姿で、お話は終わります。 白黒の絵、特に黒が夜の海の黒さ、不気味さを際立たせていて、最初見た時は、ちょっと手に取るのが怖いように思った絵本でした。きっと恐いもの見たさで手に取った子どもたちも、すぐ想像していたのとは違う気持ちでオーリーを応援しながら読み進めるのではないでしょうか。
人間社会の身勝手さと滑稽さと優しさと・・・ハラハラしながらも、アザラシ親子の愛情が報われる幸せな結末に胸がいっぱいになる大好きな絵本です。さすがエッツと思いました。小さいお子さんと一緒に、少し大きな子には漫画のように読めるので、是非手渡してみてください。

                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)


おじいちゃんのコート
アメリカに移り住んで洋服の仕立て屋さんになった若き日の「わたしのおじいちゃん」
おばあちゃんとの結婚式のために作ったお気に入りのコートを大事に大事に着ていましたが、ボロボロになったので上着に仕立て直します。そして、お気に入りの上着を大事に大事にどこへ行くにも着ていると、またボロボロに。今度はベストに仕立て直します。そしてまた…。何度も何度も縫い直されて、最後に残ったのは…?
コートが次々に生まれ変わっていく展開も楽しいのですが、その間に、子どもが生まれ、成長し、孫が生まれていく様子が素敵な絵で描かれていて、まるで家族のアルバムをめくっているかのよう。祖父の話を母親が息子に聞かせるという作りからも、一生懸命働いたおじいちゃんの温かな家族の歴史が感じられて、とても幸せな気持ちになる絵本です。
巻末に、この絵本はイディッシュ語の民謡「ぼくはすてきなコートをもっていた」が原典だとあります。作者と画家の祖先も新天地を求めてアメリカ合衆国にやってきた移民であり、「世界中から来た移民は、みなよく働き、節約し、ものを大切にしました。だからこそ新しい生活を築きあげることができたのでしょう…」と書かれています。子孫として、ものを大切にしてきた移民の文化を伝えたい…そんな作者たちの気持ちが伝わってきて、ますます素敵だと思いました。
高学年にも読み聞かせをしたいお薦めの絵本です。
                                                                 (もえぎ野web文庫 野阪麻代)


うさぎの耳はなぜ長い
これは、メキシコの、まだナオワの国といった時代ー アステカ文化というたいそう髙い文化をもっていた先祖から伝わったお話です。
あるとき山のうさぎが、神さまのところへやってきます。
「わたしは体が小さくみすぼらしいので、毎日仲間のけものたちにいじめられています。いまに殺されてしまうでしょう。どうかもっと大きな体にしてください」
すると神さまは「おまえが、とらと、わにと、さるとを自分の手で殺して、その皮をもってきたら、おまえの願いをきいてやろう。」といわれました。
そんなことはとても無理だと、涙をながして途方にくれるうさぎでしたが、仕方なく実行にうつります。勇気と知恵とありったけの力で・・・・最初こそ、こわくて足がぶるぶるふるえていたうさぎでしたが・・ワニをしとめ、さるをだます、あたりから・・・殺されるサルがかわいそうに思える展開となります。ミッションを終えたうさぎは神さまの前で、意気揚々と三枚の皮をひろげてこういいます。
「おやくそくどおり、わたくしを もりのなかで いちばんおおきなけものに してください。」神さまはしばらくの間、うさぎをだまってじっとみつめた後に、しずかにこういわれました。「わしはおまえをすばしっこく、りこうにつくってやった。だから、おまえは三びきのすぐれたけものに勝つことができたのだ。このうえ、おまえに大きなからだをさずけたら、きっと、森中のけものをいじめて、殺してしまうにちがいない。だからわしはおまえのねがいを、みんなききとどけてやるわけいはいかぬ。しかし、せめて、たったひとところだけでも大きくしてやろう。」とおっしゃると、うさぎの耳をつかんで遠くへなげだされました。
北川民次氏はメキシコに住み、メキシコの美術に強い影響をうけた画家です。三色ですが力強く、動物たちのユニークな表情やメキシコの雰囲気がとても良く出ていて、絵がお話以上に語っていると思います。小さい頃に読んで、いつまでも心に残っている絵本の一冊です。
                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)


 


うごいちゃだめ!

アヒルとガチョウは、およぐ速さや飛び上がる高さを競って、自慢比べをしますが、引き分けでした。そこで、アヒルは「うごいたらまけ競争」で決着をつけようと提案します。
蜂やウサギやカラスに群がられても、風に吹き飛ばされても、ぴくりとも動かない2羽の真剣さは、どこか滑稽で笑いを誘います。 すると、キツネがやってきて「ごちそうがころがっている」と、一緒につかまってしまうのです。緊張感の高まる場面でも意地を張り合うアヒルとガチョウに、最後までハラハラドキドキ。 でも、友達を思いやる心を持っている方が真のチャンピオンになるラストに、ホッと安堵できます。
スリリングな展開に、子供たちもグッと引き込まれて集中して聞いてくれます。表情豊かなやさしい絵も魅力的です。読み聞かせにおすすめの一冊です。
                                                                 (もえぎ野web文庫 野阪麻代)

                                          



クリスマスのおくりもの

イブの夜、おじいさんサンタとトナカイたちが、せかいじゅうのこどもたちにクリスマスのおくりものを届け終わったところから、このお話は始まります。
おじいさんサンタがパジャマに着替えてベッドに入ろうとすると、まだふくろのなかにおくりものがひとつ、のこっていることに気がつきます。 ーーーびっくりして おじいさんサンタは、いきがとまるかとおもいました。
それは、ハービー・スラム・ヘンバーガーへのおくりものでした。 ハービー・スラム・ヘンバーガーのいえはとてもまずしくて、クリスマスのおくりものを買ってもらえません。
しかし、おじいさんサンタはとてもくたびれていました。トナカイのいっとうは気分がよくありません。おまけにハービーの家は、ずっとずっととおくはなれたロリー・ポリー山のてっぺんにあるのです。 それでも、ハービーにおくりものをとどけなければならないと おじいさんサンタはおもいました。 そうしておじいさんサンタは、また赤い服をきて、ふくろをかつぎ、長靴を履いて、一人とことこ歩いて、ロリー・ポリー山をめざすのです。 途中ひこうきのりや、ジープを持っているおとこや、バイクのおとこのこやスキーをはいたおんなのこ、ロープをつかっていわのぼりをするひとに助けてもらいますが・・・少し行くとトラブルで動けなくなってしまいます。最後もロープが切れてあわやというところ、やっとやっと、ハービーの家にたどりつけたのでした。
おくりものをとどけ、また長い道のりをもどって、明け方にやっと自分の家に帰りベッドにもぐろこめた頃、ハービー―がおくりものをみつけて嬉しそうに笑っているシーンでお話は終わります。 おじいさんサンタの誠実な人柄とあきらめない実行力にじーんとくるお話です。おくりものをもらう側の子どもたちも、自分がもらうことはすっかり頭から離れてしまって、すごいね、よかったねと安堵する様子が印象的でした。 山々が連なる深い夜の風景描写も美しく、サンタさんを信じる子にも信じない子にも楽しめる素敵な絵本です。
                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)


この世でいちばんすばらしい馬
宮廷の絵描き ハン・ガンの描く馬はどれも紐でつながれています。
友達がそのわけをたずねるとハン・ガンはこうこたえました。
「ぼくの描く馬は。本物そっくりだろ。いつか命がやどって、絵からぬけだすかもしれないからね」そう、本当に抜け出すのです!
武将の頼みで この世でいちばん気性がはげしく、ゆうかんで、力の強い馬を描いたら 世にもみごとな馬が絵から飛び出し 武将を乗せて戦場を駆け巡ります。 この馬に乗った武将はまさに無敵でつぎつぎに大勝利をおさめていきますが その後には切り落とされた人の首やうで、傷ついた馬たちが・・・。
ふいに馬の目からは大つぶの涙が流れ武将を振り落とし 戦場を後にしてしまうのです。 馬を探し回っていた武将がようやくの思いでハン・ガンの家にたどり着くと なんと馬はハン・ガンが描いた5頭の馬の絵の中で静かに暮らしていました。 むごい戦場を自由に駆け回るより 動かないけど平和な絵の中で暮らす事を 選んだのでしょう。
子供達は迫力ある絵に魅入り 画の中から躍り出た馬の 行く末を固唾をのんで見守っていました。 季節を問わず読める本なので 機会があればぜひ読み聞かせの一冊に して頂ければと思います。
                                                                 (もえぎ野web文庫 味間育子)

                                    


ありがたいこってす!

ユダヤの民話です。
むかし、ある小さな村に、まずしい不幸な男が、母親とおかみさんと、6人のこどもたちといっしょに、ひとへやしかない小さな家にすんでいました。

家のなかが あんまりせまいので、男とおかみさんは、いいあらそいばかり。
こどもたちは こどもたちで、がたがた うるさくて けんかばかりしています。
男は、とうとうがまんできなくなって、なにかいいちえはないものかと 
ラビ(ユダヤの法律博士)のところへ相談にいきました。
ラビの、思いがけない助言におどろきながらも、そのとおりにしたところ、くらしはよくなるどころか 前よりひどくなるばかり・・。
’ラビは正気のさたとは思えねえな’・・・と男は思うのですが、鉛を飲んだような気持ちになりながら、ラビのいうとおりにしてみると・・・・
かぞくのものがいるだけで
しずかで ゆったりで
平和なもんでさあ・・・
ありがたいこってす!
ちょっとこっけいで生活感あふれる人々の様子が、ほのぼのとユーモアいっぱいに描かれています。最後の家族みなの寝顔がとてもいいです。
しんしんと降る雪景色が印象的で、寒い時期になると読みたくなります。
                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)


カングル・ワングルのぼうし

ホットケーキにそっくりの 
おいしいおかしの はをつけた
クランペティの木のうえに
カングル・ワングルがすわってた

けがわのぼうしにかくれてて
かおは だれにもみえやしない
やたら でっかいぼうしには
リボンや レースや すずつけて
これじゃ とってもみえやしない
カングル・ワングルの かおなんて

クランペティの木のうえで
カングル・ワングルは ひとりごと
ぼくがいちばんすきなのは
ジャムにゼリーに パンなのさ

だけどこの木にすんでみて
はっきり ぼくはしったのさ
ここへは だれも きてくれない
こんなくらしは つまらない

クランペティの木のうえで、カングル・ワングルは一人ぼっち。
たくさんの動物たちが遠くからその大きな素敵な帽子をみつけて
、巣を作らせてほしいとやってきます。
カナリア、コウノトリ、あひる、フクロウ、ハチにカタツムリ...

あなたのきれいな おぼうしに
わたしたちの すをつくらせて
すてきなあなたにぴったりの
わたしたちの すをつくらせて
おねがい、カングル・ワングルさん!

かえるやフラフラドリや金ぴかライチョウに足ゆびのないポブルや
こぐま、きらきらおはなのドングに青ヒヒ、こうし、ネズミにこうもりまで・・・

クランペティの木のうえで、
カングル・ワングルは ひとりごと
みんなそろって おどったら
どんなにたのしいことだろう

大きな帽子をかぶったカングル・ワングルの顔は最後までみることができず、現実にはいない動物もたくさん出てきます。ナンセンスの神さまのようなエドワード・リアの詩にヘレン・オクセンパリーが色鮮やかな絵をつけた絵本。英語では韻を踏んだリズムのよい詩ですが、日本語訳もリズムよく読めるように工夫されています。謎だらけのストーリーなのに、言葉が頭に残り、ふわっと幸せな気分にさせてくれる不思議な魅力の絵本です。

                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)

 
 
 
 


とおいところへいきたいな
聞きたいことがあるのに、お母さんは赤ちゃんにかかりきりで相手をしてくれません。そこでマーチンは「遠いところ」へ行ってしまおうと決心します。
カウボーイハットをかぶって、ひげをつけて変装をして・・・

すると、としよりの馬とスズメに会いました。 遠いところへ行きたいという気持ちを共有し一緒に涙を流していると、 とおいところを知っているという猫がやってきました・・・

それで猫について、目的のとおいところにつくと、 マーチンは、いろいろなことをききはじめました。 最初のうち、みんなはちゃんとこたえてくれました。
けれどいちじかんはんたったとき、けんかになりました。

それぞれのとおいところは、それぞれののこころにだけあり 本当に分かち合うことはできなかったのです。 マーチンはひとりぼっちになってしまいますが、

もう、あかちゃんの おゆも おわったろうな・・・
・・・ママは、まだ あかちゃんに かかりきりかな。
そしたら、げんかんの だんだんに こしかけて、
とおる じどうしゃを かぞえていれば いいや
そうしてまっていれば ママはおしえてくれる。

マーチンには、ちゃんと帰る場所がありました。 まっていれば 知りたいことを教えてくれる ママのいるところ..です。
マーチンはいちどもとまらずに、はしってかえります。
 
                                                                 (もえぎ野web文庫 座間彰子)

 
 
 
 


クリスマスのまえのよる・あすはたのしいクリスマス
クレメント・ムーアが昔からの言い伝えをもとに、我が子らへのクリスマスプレゼントとして書き上げたものが、たまたま友人の一人に書き留められ、1823年の新聞掲載以来アメリカの子ども達に愛されている詩ーThe Night before Christmas。この詩を多くの作家が絵本にしていますが、そのなかから二冊。
『クリスマスのまえのよる』は、デュボアザンの色鮮やかな色彩とモダンな画があたたかく、ぺーじをめくるたびにワクワク気分をもりたててくれます。サンタクロースも今のイメージそのまま、靴下に入るようにと作られた縦長で細長い形は華やかで、クリスマスの贈り物にもぴったりです。

一方トミーデ・パオラの『あすはたのしいクリスマス』には、どこか神秘的でしんしんとした冬の夜に起こる不思議が描かれます。
かおは やたらによこひろく まあるくちっちゃなたいこばら わらうとブルブルふるえます おわんにいれたゼリーのよう・・・サンタはエルフ(妖精)らしく、ユーモラスな表情がコワ可愛い。ページ飾り枠の模様も素朴で古き良きを感じさせてくれます。翻訳がリズミカルで読んでいて心地いいです。
全く同じ詩から生まれた絵本ですが、受ける印象は正反対。描き手によって違う味わいが楽しめます。                                                                  (もえぎ野web文庫 座間彰子)